新規事業を任されたとき、社内にない力を外から借りることになる。市場を調べる力、作る力、事業計画を数字にする力。
ただ、どこに頼めばいいのかは分かりにくい。「新規事業支援」を掲げる会社はたくさんあり、その中身はかなり違う。
公式サイトと公表資料だけを見て、整理してみた。順位はつけない。NEWFORは報酬額で順位を変えないと決めているし、そもそも網羅的な調査でもないからだ。
支援会社は、大きく4つに分かれる
10社を見ていくと、やっていることの重心が違うことが分かる。
1.戦略ファーム ── まだ「どの領域を狙うか」から決める段階
| 会社 | 設立 | 上場 | 公表されている特徴 |
|---|---|---|---|
| ローランド・ベルガー | 日本法人1991年 | 記載なし | 経営パフォーマンス、M&A、オペレーション改善、組織再編、サステナビリティ。世界35カ国55拠点 |
| リブ・コンサルティング | 2012年7月 | 東証グロース 480A | 新規事業開発支援、技術起点の事業化、事業開発人材育成研修。従業員約390名 |
市場の構造から入り、M&Aや組織再編まで扱う。「そもそもどこで戦うか」が決まっていない段階と重なる。
2.伴走型 ── アイデアはあるが、検証の回し方が分からない段階
| 会社 | 設立 | 公表されている実績 |
|---|---|---|
| Relic | 2015年8月 | 5,000社超の事業開発や共同事業・JVに携わったと公表。2025年9月に「新規事業創出型スタートアップM&A」を開始 |
| アルファドライブ | 2018年2月 | 累計約200社超に伴走し190件超の事業化を支援と公表。SaaS「Incubation Suite」も提供。2024年11月にユーザベースからカーブアウト完了 |
| フィラメント | 2015年4月 | マインドセットからローンチ、グロースまでの伴走。2025年4月に創業10周年 |
| ゼロワンブースター | 2012年3月 | ベンチャー共創プログラム44件、採択スタートアップ300件、応募6,000件(2022年2月時点)。2022年7月に1号ファンドを組成 |
検証のプロセスそのものを一緒に回す。1件の事業を進めたいのか、事業を出し続ける仕組みを作りたいのかで、頼み方が変わる。
仕組みを作りたいなら、アルファドライブは「事業創出の仕組みづくり」とSaaSを、Relicは「インキュベーションテック」を、ゼロワンブースターは「コーポレートアクセラレーター」を、それぞれサービスとして公表している。
3.開発・デザイン ── 作るものが決まっていて、動くものが要る段階
| 会社 | 設立 | 上場 | 公表されている特徴 |
|---|---|---|---|
| Sun Asterisk | 2013年3月 | 東証プライム 4053 | テック・デザイン・ビジネスのチームによる事業共創。グループ約2,000名。ベトナム・ハノイに拠点 |
| グッドパッチ | 2011年9月 | 東証グロース 7351 | UI/UXデザイン、ビジネスモデルデザイン、組織デザイン。2024年9月に新規事業特化型のプロダクト開発伴走支援を開始。連結286名 |
手を動かす力を、社内に持っている。アイデアの段階から頼むこともできるが、この2社の重心は「形にする」ところにある。
4.広告会社の中にある事業開発組織
| 組織 | 発足 | 公表されている特徴 |
|---|---|---|
| 電通ビジネスデザインスクエア/dentsu BX | 2017年10月 | 設置時60名。ビジョン策定、機会発見、ビジネスモデル構築、プロトタイピングなど7つのサービスライン。2025年12月に「事業開発アセスメントプログラム」を開始 |
| 博報堂 ミライの事業室/Hakuhodo JV Studio | 2019年4月 | 発足時 約30名。「チーム企業型事業創造」。2021年8月にJV Studioを設置し、3年で約30社のJV設立を目標と公表 |
どちらも、広告会社自身が事業のオーナーになる形を持っているのが特徴である。博報堂は合弁会社を作るところまでを、プログラムとして公表している。
整理していて、いちばん実務に効きそうだと思ったのは、この分け方でした。
いま自分の手元にあるのは、「問い」なのか、「アイデア」なのか、「作るものの仕様」なのか。
まだ「どの領域を狙うか」から決めるなら1番目、アイデアはあるが検証の回し方が分からないなら2番目、作るものが決まっていて動くものが必要なら3番目です。
ここがズレると、高い費用を払って、いま欲しいものと違うものが返ってきます。
問い合わせる前に、いま手元にあるものを1枚に書き出してください。決まっていること、決まっていないこと、社内で使える予算、いつまでに何を出す必要があるか。この4つです。
この1枚があると、最初の打ち合わせで「うちはこの部分をやります」「そこは別の会社のほうが」という話が早く出ます。
支援会社10社のうち、料金を公表している会社は0社でした。すべて個別見積です。稟議のスケジュールを引くときは、見積が出るまでの時間も見込んでおいてください。
人を借りる ── 1時間から、週1日まで
会社ごと頼むのではなく、人を数日だけ借りる形もある。
| サービス | 運営 | 登録人材(公表値) | 公表されている料金 |
|---|---|---|---|
| ビザスク | ビザスク(東証グロース 4490) | 国内23万人超・海外57万人超、合計80万人超 | 公表なし(資料請求制) |
| HiPro Biz | パーソルキャリア | 38,000名(69業種36職種) | エキスパートインタビュー 1回10万円〜。エグゼクティブ紹介は年間報酬の35%+11万円 |
| プロシェアリング | サーキュレーション | 33,999名/案件24,772件(2026年1月末) | 初期費用0円と明記。単価は個別 |
| 顧問バンク | 顧問バンク | 約10,000名 | 公表なし(資料請求制) |
| lotsful | lotsful(2026年8月にアカツキグループへ参画) | 利用企業2,800社超、支援実績5万件以上 | 週1回・4時間〜/月10万円〜。全案件リモート |
関わり方の深さで、はっきり分かれる。
- 1時間だけ、その業界の人に確かめたい ── ビザスク、HiPro Bizのインタビュープラン
- 月に数日、継続的に壁打ち相手が欲しい ── プロシェアリング、HiPro Biz、顧問バンク
- 手を動かす人が週1日欲しい ── lotsful。事業開発、PdM、UI/UXデザイナー、データサイエンティストなどの職種を公表
料金の見え方に差があるのは、稟議のときに効いてきます。
HiPro Bizは一部プランの単価を、lotsfulは下限額を公表しています。「月10万円から」と書いてあれば、それだけで社内の話が進むことがあります。
一方、資料請求からのサービスは、話が具体的になるまでに時間がかかります。予算の期限が近いときは、この差が響きます。
ツールは、無料で始められるものが多い
稟議を通す前に、自分ひとりで動かせるものもある。13種類を調べた。
調べる
| ツール | 提供 | 無料プラン | 公表されている料金 |
|---|---|---|---|
| SPEEDA | ユーザベース | なし | 公表なし |
| ビザスク | ビザスク | なし | 公表なし |
数字で確かめる
| ツール | 提供 | 無料プラン | 公表されている料金 |
|---|---|---|---|
| Freeasy | アイブリッジ | 初期・月額0円 | 1問×1人=10円〜、最低500円〜。国内モニター1,300万人 |
| Fastask | ジャストシステム | なし | 「一般的な調査会社と比べて約1/3」と記載。具体額はオンライン見積 |
| SurveyMonkey | SurveyMonkey | あり(1件につき最大25回答) | チームアドバンテージ 月30ドル/人(3名以上・年払い) |
| Googleフォーム | あり | 無料 |
形にする
| ツール | 提供 | 無料プラン | 公表されている料金 |
|---|---|---|---|
| Figma | Figma | あり(スターター) | プロフェッショナル 月16ドル/席(年払い)、ビジネス 月55ドル/席 |
| STUDIO | Studio | あり(Free) | Business 月3,980円(年払い)、Business Plus 月9,980円 |
| Bubble | Bubble | あり(公式料金ページに明記) | 有料プランの額は公式ページで確認が必要 |
まとめる・分析する
| ツール | 提供 | 無料プラン | 公表されている料金 |
|---|---|---|---|
| Miro | Miro | あり(Free) | Starter 月8ドル/人(年払い)、Business 月20ドル/人 |
| Notion | Notion Labs | あり(フリー) | プラス 月10ドル/人、ビジネス 月20ドル/人 |
| Looker Studio | Google Cloud | あり | Pro 月9ドル/人 |
| Tableau | Salesforce | Tableau Publicは無料 | Cloud Standard 月1,800円/人(年間契約)、Enterprise 月4,200円/人 |
ツールの話で、いちばん実務に効くのはここだと思います。
13種類のうち7種類に、無料プランがあります。Freeasyにいたっては、初期費用も月額も0円で、調査を実施したときだけ最低500円から発生します。
つまり、「予算がつかないから何もできない」という状態は、実はあまりないということです。仮説を1つ、100人に聞いてみるだけなら、数千円で足ります。
稟議を通すための材料を、稟議を通す前に作れる。ここは使えるところだと思います。
最初の1回は、無料の範囲で回してみてください。Googleフォームで社内の10人に聞く、Miroで論点を並べる、Figmaで画面を1枚描く。ここまでは費用がかかりません。
そのうえで「100人に聞いたらこうだった」という数字を持って稟議に行くほうが、通りやすくなります。Freeasyなら1問100人で1,000円です。
外の会社に頼むのは、自分で回してみて「ここは自分たちではできない」と分かってからでも遅くありません。
この記事について
また、支援会社の実績の数値は、すべて各社の公表値である。集計時点も各社で異なる。ゼロワンブースターのプログラム実績は2022年2月時点、サーキュレーションのプロ人材数は2026年1月末時点、といった具合である。
ローランド・ベルガーのグローバル規模は、公式の日本ページ(35カ国55拠点・約3,500名)と2023年12月のリリース(51都市・約3,000名)で数値が異なっていた。記載時点の差と思われるが、こちらで判断せず、公表元をそのまま併記している。