小田急電鉄の年表14件を、何の事業の発表かで分けてみた。
14件すべてが、ごみの収集と資源の循環につながる発表だった。
2019年3月に米国のごみ収集テクノロジー企業と手を組み、6月に沿線の座間市と協定、2020年8月に座間市で実証、2021年9月に事業「WOOMS」として始動。そこから名古屋・仙台・横浜・川崎、2025年には東京23区の練馬区へと広がっている。
最初の一歩は、米国のごみ収集テクノロジー企業との基本合意
2019年3月、小田急電鉄は米国のルビコン・グローバル社と基本合意書を結んだ。ごみの収集運搬を効率化する同社の技術を、国内の廃棄物事業者と一緒に試す。発表には、ルビコンは企業価値10億ドルを超え、2017年に世界経済フォーラムの賞を受けたとある。
同じ年の6月、小田急線が走る神奈川県座間市と、資源の循環を進めるための協定を結んだ。2020年8月から、座間市で収集場所をデジタル地図にし、収集車の動きをリアルタイムで見て、データで回るルートを組み直す実証を始めた。
ごみ(廃棄物)の収集・運搬・処理・再資源化を、全体としてうまく回す仕組み。小田急電鉄はこれを「新たなインフラ」と位置づけ、2021年9月に事業「WOOMS」を始めた。
事業稼働チャート
2021年9月、事業「WOOMS」として始動
2021年9月1日、小田急電鉄はウェイストマネジメント事業「WOOMS」を始動した。ビジョンは「“ごみ”のない世界へ。Beyond Waste」。収集車の運転手が使う「収集サポート」、収集の状況を管理する「管理サポート」、書類の手続きを手伝う「事務処理サポート」と、市民向けの教育などの「資源循環サポート」を、自治体と廃棄物の事業者に届ける。
そこから、ごみの種類ごとに取り組みが増えた。使用済み紙おむつは、ユニ・チャームと組んで町田市の約2.5千世帯で回収を実証(2021年10月)。家庭の生ごみは、座間市と農林水産省と組み、堆肥にして地元の農家で使う「フードサイクルプロジェクト」(2022年6月、初回300世帯)。事業者のごみは「WOOMS Connect」(2023年5月)で、試行で処理費用を31%減らした。使用済みの食用油は、グループのスーパー50店と飲食店49店から集めて、国産の航空燃料(SAF)の原料にする(2025年3月)。
ひとつの仕組み(収集のデジタル化)を、ごみの種類(紙おむつ・生ごみ・事業者のごみ・食用油)ごとに当てはめて広げている。新しい市場に入るたびに、まず「何を集めるか」から決めているのが読み取れる。
座間市で運搬回数が19%減り、23区へ
2024年7月の発表で、小田急電鉄は座間市の成果を数字で示した。2020年度と2023年度を比べると、収集車1台あたりの積載量は約5%増え、運搬回数は10,943回から8,911回へ2,032回(19%)減り、焼却量は約14%減った。
同じ発表で、仙台市若林区の家庭ごみ収集ルートの最適化実証に採択された。2022年には名古屋市の草木類の回収実証で中京圏にも進出している。2024年10月にはグッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受け、審査委員の評価には、すでに全国6自治体で導入されているとある。
数字の読み方
「6自治体」はグッドデザイン賞の審査委員の評価に書かれた2024年10月時点の数で、小田急電鉄が自ら公表した導入数ではありません。座間市の19%減と14%減は、2020年度と2023年度の比較です。
2025年11月、練馬区と東京23区で初めての連携協定を結んだ。練馬区の粗大ごみの申し込みは1日約1,000件、収集車1台で約100か所を回る。WOOMSの新しい機能で、申し込みの情報から収集ルートを自動でつくり、これまで約3.5時間かかっていたルートづくりを約5分にする。
小田急電鉄の新規事業 年表
- 2019.03米ルビコン・グローバルと基本合意、ごみ収集の効率化技術の実証を始める米国のルビコン・グローバル社と基本合意書を結び、ごみの収集運搬を効率化する同社の技術を、国内の廃棄物事業者と一緒に試し始めた。鉄道会社が「サーキュラーエコノミー事業」に取り組む最初の発表。継続中
- 2019.06座間市とサーキュラー・エコノミーの推進で連携協定を結ぶ小田急線が走る神奈川県座間市と、資源の循環を進めるための連携協定を結んだ。のちにWOOMSのテクノロジーを最初に使う自治体になる。継続中
- 2020.08座間市で、ごみ収集のデジタル化の実証を始める収集場所をデジタル地図にし、収集車がどこまで回ったかをリアルタイムで見られるようにした。たまったデータで、回るルートも組み直した。継続中
- 2021.09ウェイストマネジメント事業「WOOMS」を始動座間市での実証をもとに、ごみの収集・運搬を支える事業「WOOMS」を始めた。自治体と廃棄物の事業者に、収集を手伝うシステムと、資源循環を進める教育やプログラムを届ける。継続中
- 2021.10ユニ・チャームと組む使用済み紙おむつのリサイクル実証が、東京都の公募に採択町田市の約2.5千世帯で、使い終わった紙おむつをWOOMSで効率よく回収し、ユニ・チャームが新しい紙おむつに再生する実証。東京都と3者で協定を結んだ。継続中
- 2022.06座間市・農林水産省と「フードサイクルプロジェクト」を始める家庭の生ごみを堆肥にして市が回収し、地元の農家や市民農園で野菜づくりに使う。初回は300世帯、2023年度と合わせて600世帯。農林水産省の「農鉄連携」の取り組み。継続中
- 2022.08名古屋市の草木類の回収実証に使われ、中京圏に初めて進出可燃ごみとして出されていた庭の草木を分けて集める名古屋市の実証で、WOOMSで最適なルートをつくった。小田急線の沿線から外へ出た、最初の大きな一歩。継続中
- 2023.05ごみを出す事業者向けのサービス「WOOMS Connect」を始める年100トン以上のごみを出す事業者に、ごみの種類と量を無料で診断し、費用を下げてリサイクルを増やす計画づくりを手伝う。試行では処理費用を31%減らした。継続中
- 2024.05横浜市と、WOOMSを使ったごみ収集の実証で協定ごみ収集車の交通事故を防ぎ、収集の仕事を効率よくするための実証で、横浜市と協定を結んだ(横浜市の発表)。継続中
- 2024.07仙台市の家庭ごみ収集ルートの最適化実証に採択仙台市若林区で2024年8月から2025年2月まで実証。同じ発表で、座間市の運搬回数が4年で10,943回から8,911回に19%減り、焼却量が約14%減ったと公表した。継続中
- 2024.10WOOMSが2024年度グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)グッドデザイン・ベスト100のうち20件に贈られる金賞を受けた。審査委員の評価には、すでに全国6自治体で使われているとある。継続中
- 2025.03日揮HDなどと国産SAFの製造へ基本合意、グループの廃食用油を提供グループのスーパー50店と飲食店49店から出る使用済みの食用油を、国産の航空燃料(SAF)の原料に回す。集める量は年約8.5万リットルの見込み。継続中
- 2025.10川崎市で、ごみの分別率を上げる実証を始める収集車の運行データから、資源ごみに他のごみがどれだけ混ざっているかを集めて分析し、分別率を上げる方法を確かめる(川崎市の発表)。継続中
- 2025.11練馬区と、東京23区で初めて粗大ごみ収集の連携協定1日約1,000件の粗大ごみの申し込みから、WOOMSの新しい機能で収集ルートを自動でつくる。ルートづくりにかかる時間を約3.5時間から約5分にする。継続中