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東急の20件のうち、19件は社内起業家育成制度から生まれた事業。
第6号の「ツギツギ」は2年の実証を経て事業になり、2026年に国際観光アワードで日本企業として初めて入賞した

2015年に東急がつくった「社内起業家育成制度」は、社員が提案した事業を、提案者自身が社長や推進者になって進める仕組みです。発表に番号が書かれている事業は第6号まであり、第6号の定額宿泊サービス「ツギツギ」は、100名の募集に933名が応募した先行体験から5年で、提携ホテル500以上になりました。

2026年10月15日じっくり読んで 約7分
記録した新規事業
20件
2015年3月の社内起業家育成制度の創設から、2026年10月のツギツギの国際観光アワード入賞まで、東急の発表から拾って年表に並べた件数です
制度から生まれた事業
6号まで
発表に番号が書かれている事業。第1号NewWork・第2号YaQcel・第3号キャッシュアウト・第4号ROADCAST・第5号ふるさとパレット・第6号ツギツギ。第2号は発表の中の記述だけで確認しています
ツギツギの先行体験への応募
933名
2021年4月、100名の募集に対しての応募数。使った人の88%が満足したと答えています(2021年7月の発表)
ツギツギの提携ホテル
500以上
2026年9月24日時点。2021年4月に始めたときは、東急グループの39施設でした
この記事はこんな方に
  • 社内起業の制度を運営している方へ。2015年の制度の創設から、第1号のシェアオフィス、第6号の定額宿泊サービスまで、6つの事業がどの順で生まれたかを1枚の年表で追えます
  • 実証から事業化までの進め方を考えている方へ。ツギツギは、100名限定の先行体験(2021年4月)、第2弾(11月)、グループ外のホテルとの提携(2022年3月)を経て、2023年5月に正式に事業になりました。どの段階で何を直したかが発表に書かれています
  • 鉄道会社の新しい収益源を探している方へ。駅の近くのシェアオフィス、駅の券売機、路地裏の壁、ふるさと納税、ホテルの空室。鉄道会社が持っている場所や関係を使った事業が並んでいます
3行でいうと
  1. 東急は2015年に「社内起業家育成制度」をつくり、2016年のシェアオフィス「NewWork」を第1号に、2021年の定額宿泊「ツギツギ」まで、番号つきの事業を6つ生んだ。年表20件のうち19件は、この制度から生まれた事業の動き。
  2. 第1号から第5号は、駅の近くの部屋、駅の券売機、路地裏の壁、地域との関係など、東急がすでに持っているものを使った事業だった。発表は2021年までで、その後の動きは東急のニュースリリースの一覧には出てこない。
  3. 第6号のツギツギは、100名の先行体験から始め、課題を直しながら施設を39→78→173→500以上へ広げた。2023年5月に正式な事業になり、2026年には国内と国外の観光アワードで続けて評価された。

東急の年表20件のうち、社内起業家育成制度から生まれた事業の動きを数えてみた。

19件。番号が書かれている事業は第6号まであり、第6号の「ツギツギ」は5年で提携ホテル500以上の事業になった。

2015年3月に制度をつくってから、2016年に第1号のシェアオフィス「NewWork」、2018年に第3号の券売機のキャッシュアウトと第4号の街メディア「ROADCAST」、2019年に第5号のふるさと納税サイト、2021年に第6号の定額宿泊サービスが始まった。

この記事は2026年10月時点の公開情報にもとづきます。内容は東急株式会社(2019年9月までは東京急行電鉄株式会社)のニュースリリースの記載です。共同リリースは東急のサイトに載っているものを使っています。「制度から生まれた」は、発表にそう書かれているもの、またはその事業のその後の発表だけを数えています。第2号の翻訳・ローカライズ事業「YaQcel」は、当時の発表がニュースリリースの一覧に見当たらず、年表に入れていません。

提案した人が、そのまま社長や推進者になる制度

2015年3月、東急(当時は東京急行電鉄)は、新規事業をつくるための「社内起業家育成制度」を発表した。年齢や役職を問わず、社員が事業を提案できる。選ばれると今の仕事を離れて専任で検討でき、事業になれば提案者が自ら推進者や社長になる。

新会社をつくるときは、提案者も一定の割合で出資できる。成果が出れば、成果に応じた報酬もある。事業にならなかった場合も、東急での雇用は続くと発表に書かれている。

用語社内起業家育成制度しゃないきぎょうかいくせいせいど

東急が2015年4月から提案を受け付けている制度。提案者は選考を通ると現業から離れて専任で事業を検討し、事業化すると自ら推進者や社長になる。新会社の設立時には提案者も出資できる。

CHART

事業稼働チャート

社内起業家育成制度から生まれた事業のうち、2026年まで東急の発表で続いていることを確かめられたもの(第1〜5号は2021年より後の発表がなく、ここには入れていません)
定額宿泊「ツギツギ」(社内起業家育成制度の第6号。2021年4月に先行体験、2023年5月に正式事業化)2021–
201520162017201820192020202120222023202420252026
継続中役目を終えた

第1号から第5号は、東急がすでに持っているものを使った

第1号のNewWork(2016年5月)は、駅の近くの会員制シェアオフィス。自由が丘・横浜・吉祥寺の3店舗から始め、2年後には提携店を含めて100店舗、会員は130法人・50,000名を超えた。2021年1月末には全国216拠点・会員企業425社になり、個人向けの「relark」も始めた。

第3号は、駅の券売機でスマホから預金を引き出せるキャッシュアウト・サービス。駅の工事を担当してきた社員が提案し、2019年5月に東急線の各駅で始まった。発表は、駅の券売機でのキャッシュアウトは日本初だと書いている。

第4号のROADCAST(2018年7月)は、渋谷の路地裏の空いている壁を東急がまとめて借り、街じゅうに広告やアートを出す事業。2019年に100カ所を借り終え、2020年12月には140カ所を超えて新宿区・中央区・港区へ広がった。第5号の「ふるさとパレット」(2019年10月)は、ホテルや観光列車でつながりのある地域のふるさと納税サイトだ。

実務のコツ

駅の近くの部屋、駅の券売機、街の壁、地域との関係。第1号から第5号は、鉄道会社がすでに持っている場所やつながりを、別の使い方に変えた事業だった。JR東日本の年表とも似ている。

第6号のツギツギは、100名の先行体験から始めた

2021年4月、東急は社内起業家育成制度の第6号として、定額で全国の宿に泊まり歩けるサービス「tsugi tsugi」の先行体験を募った。対象は東急ホテルズなど東急グループの39施設、定員は100名。応募は933名で、使った人の88%が満足と答えた。

先行体験では、予約のしにくさ、滞在先が首都圏に偏ること、移動費の負担なども見つかったと、11月の第2弾の発表に書かれている。第2弾は専用の予約システムを入れて78拠点に広げ、ANAグループと組んだ。2022年3月にはグループ外のホテルとも提携し、37都道府県の173施設になった。

2023年5月、2年間の実証を経て、正式な事業にすると決めた。Peach・日本経済新聞社と3社で行った法人利用の実証で、旅するような働き方の効果も確かめたと発表にある。会社向けのプランと、ChatGPTで旅先を相談できる機能も加えた。

編集部の解説

数字の読み方

施設数は、発表ごとの時点の数字です。39施設(2021年4月)、78拠点(2021年11月)、173施設(2022年3月)、100以上(2023年5月)、200以上(2024年6月)、450以上(2026年5月)、500以上(2026年9月)。2023年5月の「100以上」は、それまでの数字と数え方が違う可能性があります。

2026年、国内と国外の観光アワードで続けて評価された

2026年5月、ツギツギは、アットホームの歩き旅アプリ「膝栗毛」と業務提携した。膝栗毛でたまるポイントを、ツギツギの宿泊ポイントに交換できる。膝栗毛は、三菱地所の社員の提案から生まれ、2024年にアットホームへ渡された事業だ。

9月、ジャパン・ツーリズム・アワードで審査委員特別賞を受けた。宿に泊まる権利を先に持つことで、出かけるきっかけをつくる仕組みが評価された。10月には、国際観光アワード「Tourism Innovation Awards 2026」の旅行イノベーション・新ビジネスモデル部門で入賞した。世界41カ国から221件の応募があり、入賞は18件。日本企業としての入賞は初めてだと発表にある(主催者の確認にもとづく)。

TIMELINE

東急の新規事業 年表

公開情報から拾った20件(2015〜2026年)
  • 2015.03新規事業をつくるための「社内起業家育成制度」を創設年齢や役職に関係なく、社員が会社に事業を提案できる制度をつくった。選ばれると今の仕事を離れて専任で検討でき、事業になれば提案者が自ら推進者や社長になる。新会社をつくるときは、提案者も一定の割合で出資できる。2015年4月から提案を受け付けた。継続中
  • 2016.05会員制サテライトシェアオフィス「NewWork」を開始、社内起業家育成制度の第1号テレワークを取り入れた企業向けに、駅の近くに会員制のシェアオフィスを設ける事業。自由が丘・横浜・吉祥寺の3店舗から始めた。社内起業家育成制度から生まれた最初の事業。継続中
  • 2018.06NewWorkの店舗ネットワークが100店舗を突破始めて約2年で、提携店を含む店舗が100店舗(直営13・提携87)になった。会員登録は130法人・50,000名を超えた。7月には品川・池袋・町田・藤沢に直営店を開いた。継続中
  • 2018.07駅の券売機で預金を引き出せる「キャッシュアウト・サービス」の開発を始める、制度の第3号スマホに出したQRコードを駅の券売機にかざすと、銀行の預金を引き出せる仕組み。横浜銀行・ゆうちょ銀行・GMOペイメントゲートウェイと開発する。駅の工事を担当してきた社員が提案した。発表は、駅の券売機でのキャッシュアウトは日本初だと書いている。継続中
  • 2018.07渋谷の空き壁面を一括して借りる街メディア「ROADCAST」を開始、制度の第4号渋谷の路地裏にある住宅や店の使われていない壁を東急がまとめて借り、街じゅうで同時に広告やアートを出せるようにする。まず約30カ所で試し、約100カ所での運用を目指した。継続中
  • 2019.04券売機でのキャッシュアウト・サービスを東急線の各駅で開始5月8日から、世田谷線とこどもの国線を除く東急線の各駅の券売機で、はまPayとゆうちょPayの利用者が現金を引き出せるようにした。1万円・2万円・3万円の3通りで、1日3万円まで。継続中
  • 2019.07ROADCASTが渋谷で壁面100カ所を達成し、本格運用へ目標の100カ所の壁を借り終え、8月から本格運用に入った。それまでに企業と12件の試験的な企画を行った。本格運用の最初は、ソニーと写真家の森山大道氏の写真展で、63カ所に約147作品を並べた。継続中
  • 2019.10ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとパレット」を開く、制度の第5号東急グループとゆかりのある地域を中心に、ふるさと納税のお礼品を載せるサイトを開いた。12の自治体から始め、東急エージェンシーが、現地に行くきっかけになるお礼品を自治体と一緒につくる。継続中
  • 2020.10ROADCASTとTISが、店の中の空き壁面にアート広告を飾る「WALL ARD」の実証を始めるカフェや美容室などの店内の空いている壁と、広告を出したい会社をアプリでつなぐ。社内起業の第4号のROADCASTが、TISの新規事業の仕組みを使って一緒に考えた。2020年11月から東京23区で試し、結果を見て2021年度からの続け方を決めるとした。継続中
  • 2020.12ROADCASTが新宿区・中央区・港区へ広がる渋谷・原宿で扱う壁は140カ所を超え、これまで40件の企画を行った。12月から新宿区・中央区・港区にも広げ、最初の企画はヘラルボニーの福祉アートの展示。2021年度中に4区で約500カ所を目指した。継続中
  • 2021.02NewWorkの新しい形、個人向けの有人型シェアオフィス「relark」を始める法人向けのNewWorkは、2021年1月末で全国216拠点・会員企業425社になった。会社が契約していない人やフリーランスも使えるよう、スタッフがいる個人向けのシェアオフィスを新しく始めた。継続中
  • 2021.04旅するように暮らす定額制の住み替えサービス「tsugi tsugi」の先行体験を募る、制度の第6号東急ホテルズなどの全国39施設を、決まった料金で次々に泊まり歩けるサービス。まず60泊と30泊のプランで100名を募った。社内起業家育成制度の第6号。継続中
  • 2021.07tsugi tsugiの先行体験に933名が応募、利用者の88%が満足100名の募集に933名が応募し、使った人の88%が旅するような暮らし方に満足したと答えた。秋以降に第2弾を募ると発表した。継続中
  • 2021.11TsugiTsugiの第2弾、78拠点に広げ、ANAグループと連携先行体験で見つかった課題(予約のしにくさ、滞在先が首都圏に偏ること、移動費の負担など)を直し、泊まれる施設を78拠点に増やした。全プランにANAの航空券などに使えるANA SKY コインをつけた。継続中
  • 2022.03TsugiTsugiが東急グループ外のホテルと提携し、全国173施設に東急グループの外のホテルとも組み、37都道府県の173施設に広げた。始めたときは17都道府県の39施設だった。気軽に使える13泊のプランも加えた。継続中
  • 2023.05TsugiTsugiを正式に事業化し、法人向けプランも始める2年間の実証を経て、正式な事業にすると決め、いつでも申し込めるサービスにした。会社向けのプランと、ChatGPTを使って旅先の相談ができる機能も加えた。泊まれる施設は全国100以上。継続中
  • 2024.06TsugiTsugiと交通4社で「九州・沖縄 オフピーク旅促進プロジェクト」を始めるソラシドエア・スターフライヤー・JR九州・ニッポンレンタカーと組み、混んでいない時期の九州・沖縄への旅を増やすプロジェクト。泊まれる施設は全国200以上になった。継続中
  • 2026.05ツギツギとアットホームの歩き旅アプリ「膝栗毛」が業務提携歩き旅アプリ「膝栗毛」でたまるポイントを、ツギツギの宿泊ポイントに交換できるようにした。まずは東海道五十三次のルートから。ツギツギの提携ホテルは全国450以上。継続中
  • 2026.09ツギツギが「ジャパン・ツーリズム・アワード」で審査委員特別賞宿に泊まる権利を先に持つことで、出かけるきっかけをつくる仕組みが評価された。同じ年にクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」も同じ賞を受けた。提携ホテルは全国500以上。継続中
  • 2026.10ツギツギが国際観光アワード「Tourism Innovation Awards 2026」で入賞、日本企業として初スペイン・セビリアで開かれた国際観光アワードの、旅行イノベーション・新ビジネスモデル部門で入賞した。世界41カ国から221件の応募があり、入賞は18件。日本企業としての入賞は初めてと発表にある(主催者の確認にもとづく)。継続中
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NEWFOR MEMO
編集部のメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「制度は、提案者が最後まで進めるところまで決めておく」だと思う。

番号つきの6つ:第1号NewWork(2016年5月)/第2号YaQcel(2016年6月、発表の中の記述のみ)/第3号キャッシュアウト(2018年7月に開発開始、2019年5月に開始)/第4号ROADCAST(2018年7月)/第5号ふるさとパレット(2019年10月)/第6号ツギツギ(2021年4月に先行体験、2023年5月に正式事業化)。

ツギツギの施設数:39(2021年4月)→78(2021年11月)→173(2022年3月)→200以上(2024年6月)→500以上(2026年9月)。先行体験から正式な事業化まで2年1か月。

最後に注意点。第1号から第5号の、2021年より後の動きは、東急のニュースリリースの一覧には出てこない。続いているかどうかは、この記事では確かめていない。どの事業も、売上や利益、出資額は発表に書かれていない。