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JALの21件のうち、19件はドローン。
2020年に「操縦者を育てる講座」から始め、2025年に日本初のドローンサービス品質認証を取った

21件を中身で分けると、ドローン19件、CVCファンド2件です。ドローンの19件に、JALが自分で開発した機体として発表されたものはありません。担っているのは、運航の管理、安全の手順、操縦者の育成です。

2026年10月13日じっくり読んで 約7分
記録した新規事業
21件
2020年8月の東京都のドローン物流プロジェクトへの採択から、2026年6月の秋芳洞の調査まで、日本航空の発表から拾って年表に並べた件数です
そのうちドローン
19件
残りの2件は、CVCファンドの設立(2026年3月)と、そのファンドを通じたA*Quantumへの出資(2026年5月)です
1人で同時に運航したドローン
5機
2024年10月、1人の遠隔操縦者が全国4地点で計5機を同時に運航しました(NEDO・KDDIとの実証)
2号ファンドの大きさ
50百万USドル
2026年3月に設立した「JAL Innovation Fund II」のファンドサイズとして、発表に書かれています
この記事はこんな方に
  • 本業の強みを新しい領域に持ち込みたい方へ。航空会社が「パイロットの安全訓練」をドローンの講座と運航管理に置き換えていった順番が、1枚の年表で見られます
  • 自治体と一緒に事業を作っている方へ。奄美・瀬戸内町との連携協定(2020年)から、実証(2022年)、共同出資の運航会社(2023年設立)までの3段階を追えます
  • 実証実験から事業化への道筋を探している方へ。医薬品のドローン配送が、2022年の都内初の実証から2023年のレベル4飛行まで、毎年どこまで進んだかがわかります
3行でいうと
  1. JALの年表21件のうち19件はドローン。2020年8月の東京都のプロジェクト採択と、9月の操縦者を育てる講座「JAMOA」から始まった。
  2. 19件の中に、JALが自分で開発した機体として発表されたものはない。KDDIの運航管理システムに航空安全の知見を足し、操縦者の訓練をつくり、リスク評価と運用の手順を書く。担っているのは「安全に飛ばす仕組み」だ。
  3. 奄美・瀬戸内町とは、2020年の連携協定、2022年の実証を経て、2023年に共同で運航会社を設立した。2025年には日本で初めてドローンサービスの品質認証を取った。

JALの年表21件を、中身で分けてみた。

ドローン19件、CVCファンド2件。

航空会社の新規事業の年表が、ほとんどドローンで埋まっている。しかも19件のどれにも、JALが自分で開発した機体として発表されたものは出てこない。年表に並んでいるのは、運航の管理、安全の手順、操縦者の育成だ。

この記事は2026年10月時点の公開情報にもとづきます。内容は日本航空株式会社のプレスリリース(カテゴリ「新事業領域」ほか)の記載です。共同リリースは、日本航空のサイトに載っているものを使っています。2026年10月13日時点で「新事業領域」のリリースは87件あり、見出しに「ドローン」「無人航空機」が入るものは29件でした。年表には、そのうち事業の節目になる19件を入れています。

最初に作ったのは、操縦者を育てる講座だった

2020年9月、JALはドローンなどを安全に運航できる人を育てる講座「JAL Air Mobility Operation Academy(JAMOA)」を10月から開くと発表した。発表は「日本で初めて、航空機のパイロット訓練のノウハウを活かした座学カリキュラム」と書いている。

その前の8月には、KDDIやJR東日本などと5社で、東京都の「ドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」に採択された。9月に米Matternetと医療物流で業務提携し、10月に奄美・瀬戸内町などと連携協定を結んだ。最初の3か月で、人を育てる、都市で運ぶ、離島で運ぶ、の3つの入口が開いている。

用語CRMしーあーるえむ

Crew Resource Managementの略。安全に運航するために、使えるすべての人・情報・道具を生かすという考え方で、航空会社のパイロットの訓練の柱になっている。JALはJAMOAや、2024年の医薬品配送の実証でも、この訓練をドローンの運航に持ち込んだ。

CHART

事業稼働チャート

JALの新規事業のおもな流れと、その期間
ドローン操縦者の講座「JAMOA」(2020年10月開講、2024年に講座を拡充)2020–
都内の医薬品のドローン配送(東京都のプロジェクト、KDDIなどと)2020–
奄美・瀬戸内町のドローン(連携協定→実証→奄美アイランドドローン)2020–
KDDIとの運航管理と1対多運航(NEDO ReAMo)2022–
CVCファンド(1号は2019年から、2号は2026年から)2019–
20192020202120222023202420252026
継続中役目を終えた

KDDIのシステムに、航空の安全を足す

2022年2月、JALとKDDIは、JALの航空安全の技術と知見をKDDIのドローンの運航管理システムに生かす基本合意書を結んだ。8月には2社でNEDOのReAMoプロジェクトに採択され、1人の操縦者が複数のドローンを運航する「1対多運航」の技術開発を始めた。

2024年5月に1人で3機、10月には1人で全国4地点の計5機を同時に運航した。5機の実証でJALが担ったのは、リスク評価と、運用の手順を決めることだと発表に書かれている。2023年11月には、KDDIスマートドローンと資本業務提携を結んでいる。

実務のコツ

医薬品のドローン配送は、毎年1段ずつ進んでいる。2021年に兵庫県洲本市で7つの橋梁を越え、2022年に都内で永代橋などを横断し、2023年12月に東京都檜原村でレベル4飛行での輸送を1週間行った。

奄美では、協定から3年で運航会社に

2020年10月、鹿児島県瀬戸内町などとドローンの連携協定を結んだ。2022年10月には加計呂麻島・与路島・請島を結んで、災害時と平時の使い方を確かめた。

2023年11月30日、瀬戸内町とJALは共同で運航会社「奄美アイランドドローン」を設立し、2024年2月29日から住民向けのサービスを始めた。災害時は孤立した集落へ緊急の物資を、平時は医療関係品や日用品を運ぶ。JALは運航の管理と安全の管理のノウハウを出し、始めのうちは操縦者も派遣すると発表にある。

編集部の解説

数字の読み方

「19件」は、この記事の年表に入れた件数です。日本航空のサイトの「新事業領域」のリリースのうち、見出しにドローンが入るものは29件ありました(2026年10月13日時点)。同じ実証の続報などは、年表では節目の1件にまとめています。

品質認証という形で、仕組みを外に見せる

2025年6月、JALグループは日本で初めて「ドローンサービス品質認証(JIS Y1011)」を取得した。認証を受けたのは「輸送・配送」「緊急搬送」「災害調査」の3つのカテゴリのサービスとコンサルティングだ。同じ月には、NEDOの「ドローンの多数機同時運航」のプロジェクトにも採択され、ビジネスで使うときの安全管理の要件をまとめる役を担っている。

2026年6月には、山口県の秋芳洞でドローンを使った鍾乳洞の調査を3か年計画で始めた。暗くて狭い洞窟の中を、人の代わりにドローンが調べる。航空会社が積み上げてきた運航の仕組みが、空港から遠い場所で使われている。

TIMELINE

JALの新規事業 年表

公開情報から拾った21件(2020〜2026年)
  • 2020.08東京都の「ドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」に5社で採択KDDI・JR東日本・ウェザーニューズ・Terra Droneと5社で東京都の公募に提案し、採択された。医薬品のドローン配送や、駅周辺のフードデリバリー・警備のビジネスモデルを検討する。継続中
  • 2020.09パイロット訓練のノウハウでドローン操縦者を育てる講座「JAMOA」を開くと発表ドローンなどの無人航空機を安全に運航できる人を育てる講座「JAL Air Mobility Operation Academy」を2020年10月から開くと発表した。発表は「日本で初めて、航空機のパイロット訓練のノウハウを活かした座学カリキュラム」と書いている。継続中
  • 2020.09米Matternetとドローンの医療物流で業務提携スイスと米国で検体や医薬品のドローン輸送を手がける米Matternetと、日本での医療物流の市場調査と事業参画に向けて業務提携した。継続中
  • 2020.10奄美・瀬戸内町など5者でドローンの連携協定鹿児島県瀬戸内町、日本エアコミューター、三井住友海上、MS&ADインターリスク総研と、ドローンで離島の物流の課題を解く連携協定を結んだ。継続中
  • 2021.11兵庫県でレベル4を見据えた実証、医薬品の疑似品を運び7つの橋梁を越える洲本市で、医薬品の疑似品を最大約5kgまで載せて往復約5kmを飛んだ。発表は「日本で初めて人口集中地区で橋梁7つを越える飛行に成功」と書いている。継続中
  • 2021.11メディパルとドローンでの医薬品輸送の共同検討を開始医薬品卸のメディパルホールディングスと、ドローンを使った持続可能な医薬品の物流網づくりの共同検討を始めた。継続中
  • 2021.12住友商事・Bellと大型ドローンAPT70の実証を米テキサス州で実施住友商事、米Bellと、最大約45kgを積める大型ドローンAPT70を使い、災害時を想定した飛行の実証をテキサス州フォートワース市で行った。継続中
  • 2022.02KDDIとドローンの社会インフラ化に向けて基本合意JALの航空安全の技術と知見を、KDDIのドローンの運航管理システムに生かす基本合意書を結んだ。全国で飛ぶ複数のドローンをまとめて管理する体制と、企業・自治体向けの支援のビジネスモデルを検討する。継続中
  • 2022.02都内で初めて、永代橋など複数の大橋をドローンで横断する医薬品配送の実証隅田川に架かる永代橋など複数の大橋をドローンで横断して、医薬品を届ける実証を行った。継続中
  • 2022.08KDDIと1人で複数のドローンを運航する「1対多運航」の技術開発に着手NEDOのReAMoプロジェクトに採択され、1人の操縦者が複数のドローンを運航する「1対多運航」の技術開発をKDDIと始めた。継続中
  • 2022.11奄美・瀬戸内町で、災害時と平時のドローンの使い方を実証加計呂麻島・与路島・請島を結び、災害時の救援物資と、平時の日用品や医療関係品の輸送をドローンで検証した。継続中
  • 2022.12JALエンジニアリングとプロドローンがドローンの技術協力で基本合意航空機の整備を担うJALエンジニアリングが、機体を開発するプロドローンと、ドローンの製造・整備と航空局の認証取得で協力する基本合意書を結んだ。継続中
  • 2023.12日本で初めて、医薬品をドローンのレベル4飛行で運ぶ実証東京都檜原村で、有人地帯で補助者なしに目視外を飛ぶ「レベル4飛行」で医薬品を運ぶ実証を、KDDIなど6社で1週間行った。継続中
  • 2023.12KDDIスマートドローンと資本業務提携KDDIスマートドローンと業務提携し、同社が第三者割当増資で発行する株式を取得した。継続中
  • 2024.02瀬戸内町と共同でドローン運航会社「奄美アイランドドローン」を設立瀬戸内町と共同で出資した運航会社が、2024年2月29日から住民向けサービスを始めた。災害時は孤立集落への緊急物資、平時は医療関係品や日用品を運ぶ。継続中
  • 2024.111人の遠隔操縦者が全国4地点でドローン5機を同時に運航NEDO・KDDIとの実証で、1人の操縦者が全国4地点で計5機を同時に運航した。JALは航空安全の知見をもとにリスク評価を行い、運用の手順を決めた。継続中
  • 2025.06日本で初めて「ドローンサービス品質認証(JIS Y1011)」を取得「輸送・配送」「緊急搬送」「災害調査」の3つのカテゴリで、ドローン運航支援サービスの品質認証を取得した。発表は日本で初めての取得と書いている。継続中
  • 2025.06NEDOの「ドローンの多数機同時運航」のプロジェクトに採択レベル3.5とレベル4で多くのドローンを同時に運航する実証を行い、ビジネスで使うときの安全管理の要件をまとめるプロジェクトに採択された。継続中
  • 2026.03米国に投資会社を設け、自社で運営するCVCファンド「JAL Innovation Fund II」を設立シリコンバレーを拠点とするJAL100%出資のJapan Airlines Venturesが運営する2号ファンドを設けた。ファンドの大きさは50百万USドル。継続中
  • 2026.05CVC1号ファンドを通じて、量子技術のA*Quantumに出資2023年から航空機の整備計画の最適化ツールを一緒に開発してきたA*Quantumに出資した。ツールは2026年3月に正式運用を始めている。継続中
  • 2026.06山口県の秋芳洞で、ドローンを使った鍾乳洞の調査プロジェクトを開始美祢市、九電ドローンサービスと、秋芳洞の未踏のエリアをドローンで調べるプロジェクトを3か年計画で始めた。発表は国内初と書いている。継続中
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NEWFOR MEMO
編集部のメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「機体よりも先に、安全に飛ばす仕組みを売る」だと思う。

ドローンの流れ:東京都のプロジェクト採択(2020年8月)→JAMOA開講の発表(2020年9月)→奄美の連携協定(2020年10月)→KDDIと基本合意(2022年2月)→1対多運航の開発(2022年8月)→レベル4で医薬品輸送(2023年12月)→奄美アイランドドローン開業(2024年2月)→1人で5機(2024年10月)→品質認証(2025年6月)。

CVC:1号ファンド「JAL Innovation Fund」は2019年から外部パートナーとの共同運営。2026年3月に、米国のJapan Airlines Venturesが自社で運営する2号ファンド(50百万USドル)を設けた。

最後に注意点。KDDIスマートドローンへの出資額と比率、奄美アイランドドローンへの出資額と比率は、どの発表にも書かれていない。年表のうち共同リリースのものは、日本航空のサイトに載っている文面で確かめた。

出典

  1. 日本航空:プレスリリース「新事業領域」
  2. 日本航空:日本初、パイロット訓練ノウハウを活かした無人航空機オペレーターの人財育成プログラムを10月から開始(2020年9月1日)
  3. 日本航空・KDDI:JALとKDDI、ドローンの社会インフラ化に向け協業(2022年2月15日)
  4. 日本航空ほか:日本初、医薬品をドローンのレベル4飛行で輸送する実証実施(2023年12月8日)
  5. 日本航空・KDDIスマートドローン:日本航空とKDDIスマートドローンが資本業務提携(2023年12月14日)
  6. 日本航空:奄美瀬戸内町とJALは、共同でドローン運航会社「奄美アイランドドローン㈱」を設立(2024年2月29日)
  7. 日本航空ほか:ドローンによる医薬品配送ビジネスモデルの実現にむけた検証を実施(2024年11月27日)
  8. NEDO・KDDI・日本航空:遠隔操縦者1人が全国4地点のドローン5機体同時運航に成功(2024年11月15日)
  9. 日本航空:JAL、日本初となる「ドローンサービス品質認証(JIS Y1011)」を取得(2025年6月5日)
  10. 日本航空:JAL、新たに自社運営CVCファンド「JAL Innovation Fund II」を設立(2026年3月3日)