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ヤマトHDの17件は、すべてスタートアップやファンドへの出資。
2024年8月に動き出したKIF 2号が10件、宇宙・水産・量子・免税まで、宅急便の外へ網を広げた

17件を通り道で分けると、KURONEKO Innovation Fund 2号を通じたもの10件、1号ファンドを通じた追加出資4件、ほかのファンドへの出資3件になります。出資の金額は、17件のどの発表にも書かれていません。

2026年10月11日じっくり読んで 約7分
記録した新規事業
17件
2024年2月のシックスティーパーセントへの追加出資から、2026年10月のOceanへの出資まで、ヤマトホールディングスの発表から拾って年表に並べた件数です
KIF 2号を通じた出資
10件
2024年8月のサグリ(初の出資案件)から、2026年10月のOceanまで。HIVEDへの追加出資を含みます
ほかのファンドへの出資
3件
NordicNinja Fund II(北欧)、INTERLAGOS LP I(米国)、Scrum Hokkaido Fund I(北海道)。スタートアップの情報網を広げるための出資と書かれています
KURONEKO Innovation Fundの総額
130億円
2024年10月の発表に「総額130億円のCVCファンド」と書かれています
この記事はこんな方に
  • CVCファンドを運営している方、これから作る方へ。1号ファンドの出資先に追加で出しながら、2号ファンドで新しい出資先を広げていく順番が、1枚の年表で見られます
  • 本業から遠い領域にも出資するか迷っている方へ。人工衛星の推進機、魚の神経締めロボット、量子技術。宅急便の会社がなぜそこに出すのか、発表に書かれた理由を並べています
  • 海外のスタートアップとの接点を探している方へ。英国・米国・中国・韓国の会社への出資と、北欧・米国のファンドへの出資が、それぞれ何を目的にしているかを追えます
3行でいうと
  1. ヤマトHDの年表17件は、すべてスタートアップやファンドへの出資。通り道で分けると、KURONEKO Innovation Fund 2号10件、1号ファンドの追加出資4件、ほかのファンドへの出資3件になる。
  2. 2号ファンドの初案件は2024年8月のサグリ(衛星データとAIで農地を見る会社)。そのあと英国のHIVED、米国のBounce、米国のShinkei Systems、韓国のWATTなど、海外の会社にも出している。
  3. 出資の金額は17件のどの発表にも書かれていない。書かれているのは、ファンド全体の総額130億円と、出資先の規模(都市の数、拠点の数など)だ。

ヤマトHDの年表17件を、通り道で分けてみた。

KURONEKO Innovation Fund 2号を通じたもの10件、1号ファンドを通じた追加出資4件、ほかのファンドへの出資3件。

17件はすべて出資だ。宅急便の会社が、2年8か月のあいだに、スタートアップと投資ファンドへ17回お金を出している。その相手は物流の会社だけではない。

この記事は2026年10月時点の公開情報にもとづきます。内容はヤマトホールディングス株式会社のニュースリリースの記載です。KURONEKO Innovation Fundの運営者は、各発表によればグローバル・ブレイン株式会社です。出資の金額は、どの発表にも書かれていません。

1号ファンドの出資先に、もう一度出す

2024年8月の発表によれば、KURONEKO Innovation Fundは2020年12月、第1号案件として中国で自動運転ロボットを開発するYours Technologiesに出資している。Yoursは中国の111都市で、ショッピングモールなどでの荷物の配送や移動販売にロボットを使っている。2024年8月、そのYoursに追加で出資した。

同じ1号ファンドから、2024年2月にZ世代向けの越境ファッションEC「60%」のシックスティーパーセント、6月に水を推進剤にした人工衛星の推進機を開発するPale Blue、2026年3月にブランド公式のリユースを支えるFree Standardへ、それぞれ追加で出した。Free Standardの発表には、創業の当初から物流の面で関わってきたことが書かれている。

用語CVCしーぶいしー

コーポレート・ベンチャー・キャピタルの略。事業会社が自分のお金でファンドをつくり、スタートアップに出資するしくみ。ヤマトHDのKURONEKO Innovation Fundは、運営をグローバル・ブレインに任せている。

CHART

事業稼働チャート

ヤマトHDが出資に使った通り道と、その期間
KURONEKO Innovation Fund(1号。Yours・60%・Pale Blue・Free Standardへの追加出資)2020–
KURONEKO Innovation Fund 2号(サグリ・HIVED・Bounce・Shinkei・WATT・JIJ・Oceanなど)2024–
ほかのファンドへの出資(NordicNinja・INTERLAGOS・Scrum Hokkaido)2024–
2020202120222023202420252026
継続中役目を終えた

2号ファンドは、宅急便の外へ

2024年8月、KIF 2号の初めての出資先は、衛星データとAIで農地を調べるサグリ(兵庫県丹波市)だった。発表は「ヤマトグループとも関わりが深い一次産業の支援」を評価したと書いている。

そのあとの出資先は、英国でEVの宅配便を運ぶHIVED、世界4,000以上の都市で手荷物を預かる米国のBounce、クラフトビールの流通を変えるBest Beer Japan、船上で魚の神経締めを自動化する米国のShinkei Systems、東南アジアで生鮮品を産地から届けるSECAI MARCHE。

2026年に入ると、マンションの中で荷物を運ぶ韓国のWATT(4月)、量子技術で最適化を行うJIJ(8月)、訪日客の免税の返金をオンラインで行うOcean(10月)と続いた。WATTとは出資の前に、ヤマト運輸が関東の大規模マンション3か所で実証実験を行っていた。

実務のコツ

出資先は「運ぶ」に近いものから遠いものまである。発表を読むと、遠いものにも「インバウンド領域でのシナジー」「物流での量子技術の活用」のように、本業とつなぐ一言が必ず添えられている。

ファンドに出して、情報の網を広げる

2024年9月に北欧のNordicNinja Fund II、10月に米国のINTERLAGOS LP I、2025年3月に北海道のScrum Hokkaido Fund Iへ出資した。スタートアップに直接ではなく、ほかのファンドに出す形だ。

発表は目的をそれぞれ書いている。北欧はサステナビリティと環境の技術情報、米国はロボティクスやAIなど先端技術のスタートアップの情報網、北海道は北海道ボールパークFビレッジを中心にした地域の課題解決だ。

編集部の解説

数字の読み方

「総額130億円」はKURONEKO Innovation Fund全体の大きさで、2024年10月の発表に書かれています。17件それぞれの出資額は書かれていないため、1件あたりの額はわかりません。

同じ相手に、2回目を出す

英国のHIVEDには、2024年10月に出資を決め、2025年7月に追加で出した。その間にHIVEDはロンドン市内の拠点を増やし、英国内で初めて拠点間輸送と配送をすべてEVで運ぶ物流網をつくったと、追加出資の発表に書かれている。

17件のうち5件が追加出資だ。1回出して終わりではなく、相手の成長を見て、もう一度出す。年表には、その繰り返しが残っている。

TIMELINE

ヤマトHDの新規事業 年表

公開情報から拾った17件(2024〜2026年)
  • 2024.02Z世代向け越境ファッションEC「60%」のシックスティーパーセントに追加出資KURONEKO Innovation Fundを通じて、韓国などアジア約10か国の約1,400以上のブランドが出店する越境ファッションEC「60%」を運営するシックスティーパーセントに追加で出資した。利用者の約9割が10代〜20代。継続中
  • 2024.06水を推進剤にした小型人工衛星用の推進機を開発するPale Blueに追加出資KURONEKO Innovation Fundを通じて、水を推進剤にする小型人工衛星用の推進機を開発する東京大学発のPale Blueに追加で出資した。同社の推進機は2023年3月に宇宙での作動に初めて成功している。継続中
  • 2024.08KIF 2号の初の出資先として、衛星データとAIで農地を見るサグリに出資「KURONEKO Innovation Fund 2号」の初めての出資案件として、衛星データとAIで農地の区画化や耕作放棄地の調査などを行うサグリ(兵庫県丹波市)に出資した。継続中
  • 2024.08中国で自動運転ロボットを開発するYours Technologiesに追加出資KURONEKO Innovation Fundを通じて、中国の111都市で配送や移動販売の自動運転ロボットを展開するYours Technologiesに追加で出資した。同ファンドは2020年12月の第1号案件としてYoursに出資していた。継続中
  • 2024.09北欧のスタートアップに投資するVCファンド「NordicNinja Fund II」に出資サステナビリティや環境の分野で北ヨーロッパのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルファンド「NordicNinja Fund II SCSp」(ルクセンブルク)に、2024年9月30日に出資した。継続中
  • 2024.10英国でEVの宅配便を運ぶHIVEDに出資KIF 2号を通じて、配送車両をすべてEVにし、データ分析で宅配便を効率よく運ぶ英国のHIVEDに出資すると決めた。継続中
  • 2024.10宇宙・AI・バイオに特化した米国のファンド「INTERLAGOS LP I」に出資宇宙・AI・バイオなどの先端テクノロジーに特化した米国のINTERLAGOS CAPITALが運営するファンド「INTERLAGOS LP I, LLC」に出資すると決めた。継続中
  • 2024.11クラフトビールの流通をデジタルで変えるBest Beer Japanに出資KIF 2号を通じて、醸造所の管理ソフト、飲食店向けのECプラットフォーム、樽のシェアリング「レン樽」などを手がけるBest Beer Japan(埼玉県朝霞市)に出資した。継続中
  • 2024.12世界4,000以上の都市で手荷物を預かるBounceに出資KIF 2号を通じて、世界4,000以上の都市で地元企業の空きスペースを使い、13,000か所以上で手荷物を預かるサービスを運営する米国のBounceに出資した。継続中
  • 2025.03北海道のアクセラレーションプログラムに参画し「Scrum Hokkaido Fund I」に出資北海道ボールパークFビレッジを中心にスタートアップの地域実装を支えるアクセラレーションプログラム「Hokkaido F Village X」に参画し、「Scrum Hokkaido Fund I, LP」に出資した。継続中
  • 2025.06魚の神経締めを自動化するロボットの米Shinkei Systemsに出資KIF 2号を通じて、船上での魚の神経締めを自動化するロボット「Poseidon」を開発し、漁獲から卸売りまで手がける米国のShinkei Systemsに出資した。継続中
  • 2025.07英国のHIVEDに追加出資KIF 2号を通じて、英国のHIVEDに追加で出資した。HIVEDはロンドン市内に拠点を増やし、英国内で初めて拠点間輸送と配送をすべてEVで運ぶ物流網をつくった。継続中
  • 2025.10東南アジアで生鮮品を産地から届けるSECAI MARCHEに出資KIF 2号を通じて、東南アジアで独自のコールドチェーンを持ち、生産者と消費者を直接つなぐECプラットフォームを運営するSECAI MARCHE(東京都千代田区)に出資した。継続中
  • 2026.03ブランド公式のリユースを支えるFree Standardに追加出資KURONEKO Innovation Fundを通じて、ブランド公式のリユース品の収集から販売までを支えるシステム「Retailor」を提供するFree Standard(東京都渋谷区)に追加で出資した。継続中
  • 2026.04マンションの中で荷物を運ぶロボットの韓国WATTに出資KIF 2号を通じて、建物のエントランスから玄関先まで荷物を自律走行で運ぶロボットを開発する韓国のWATTに出資した。ヤマト運輸と2025年8月〜12月に関東の大規模マンション3か所で実証実験を行っていた。継続中
  • 2026.08量子技術で配送計画などを最適化するJIJに出資KIF 2号を通じて、量子技術を使った数理最適化のプラットフォーム「JijZept」を提供するJIJ(東京都港区)に出資した。物流での量子技術の活用の可能性を検討するとしている。継続中
  • 2026.10訪日客の免税の返金をオンラインで行うOceanに出資KIF 2号を通じて、訪日客の消費税の免税をあとから返金する「リファンド方式」に対応したプラットフォーム「Ocean Tax Refund」を展開するOcean(東京都中央区)に出資した。免税制度は2026年11月1日からリファンド方式に移る。継続中
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NEWFOR MEMO
編集部のメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「本業から遠い出資先にも、本業とつなぐ一言を必ず添える」だと思う。

KIF 2号の流れ:サグリ(2024年8月・初案件)→HIVED(2024年10月)→Best Beer Japan(2024年11月)→Bounce(2024年12月)→Shinkei Systems(2025年6月)→HIVED追加(2025年7月)→SECAI MARCHE(2025年10月)→WATT(2026年4月)→JIJ(2026年8月)→Ocean(2026年10月)。

1号ファンドの追加出資:60%(2024年2月)→Pale Blue(2024年6月)→Yours(2024年8月。初出資は2020年12月)→Free Standard(2026年3月)。ほかのファンド:NordicNinja(2024年9月)→INTERLAGOS(2024年10月)→Scrum Hokkaido(2025年3月)。

最後に注意点。17件のどの発表にも、出資額は書かれていない。1号ファンドの最初の出資(2020年12月のYours)は、2024年8月の発表の中の記述で確認したもので、当時の発表は年表に入れていない。