ANAホールディングスの年表24件を、中身で分けてみた。
アバターロボット5件、マイルと暮らし5件、貨物4件、空飛ぶクルマ4件、LCC3件、そのほか3件。いちばん多いのは、飛行機ではなく、遠くの場所にいるように動けるロボットの記録だった。
そして、そのロボットの5件目は、ANA自身の空港の話になっている。
アバターの5件は、8年で空港に戻ってきた
2018年9月、AVATAR X。JAXAと組み、宇宙空間でアバターを使う事業を考えるプログラムを始めた。
2020年4月、avatarinを設立。社内のデジタル・デザイン・ラボで進めていた「アバター」のプロジェクトを、資本金2億円の会社にした。ANAHDは発表で、これをANAHD発の初めてのスタートアップと書いている。設立の時点では、新型コロナへの対応として、ロボット「newme」を医療施設へ優先して提供するとしていた。
2021年7月、ベータ版。遠い場所を体感できる「瞬間移動サービス」のベータ版を、2021年秋から提供すると発表した。
2024年7月、累計77億円。6つの会社がavatarinの第三者割当増資を引き受け、総額37億円を出資した。ANAHD・日本政策投資銀行・三菱UFJ銀行の出資と合わせ、avatarinの資金調達は累計77億円になった。
2026年8月、空港の窓口へ。ANAとavatarinは、newmeを使って関西空港のバックオフィスから地方空港のお客様の問い合わせを支える取り組みを始めた。羽田空港で集めた約2.5万件の接客データを確かめ、空港での問い合わせの多くが遠隔でも対面と同じように解決できる(解決率98.4%)ことを確認したうえでの導入である。
遠くにいる人が、ロボットなどを通して、その場にいるように見たり話したり動いたりするしくみです。avatarinは、ロボットに「アバターインする」と表現しています。
外へ出したスタートアップが、親会社の現場の困りごとを解く側として戻ってくる。「外で育てて、内で使う」という順番も、社内発の事業の育て方のひとつだ。
事業稼働チャート
マイルと貨物は、少しずつ形を変えて続いている
マイルと暮らしの5件は、2016年のANA X設立から始まる。ANAマイレージクラブを軸に、2020年にモバイル決済「ANA Pay」、2023年にECモール「ANA Mall」、2026年8月にはソフトバンクと組んだ家庭用インターネット「ANA光」「ANAホームWi-Fi」を始めた。ホームWi-Fiは、1年続けると最大1万9,400マイルが貯まる。2026年9月には、子会社の全日空商事が、お米を起点にした食の専門店AKOMEYA TOKYOの全株式を取得する契約を結んでいる。
貨物の4件は、2014年に貨物専業のANA Cargoを始動したところから始まる。2025年8月に日本郵船から日本貨物航空の全株式を取得し、2026年3月に貨物の3つの会社を2027年4月1日付で1つにすると決めた。2026年9月には、その新しい会社の社名を「ANA Nippon Cargo Airlines」、ブランド名を「ANA Nippon Cargo」に決めている。
宇宙向けのプログラムから始まったアバターが、医療施設を経て、ANAの空港の窓口に立った。24件の中で、いちばん長くつながっている線である
ANAホールディングスの新規事業 年表
- 2014.03貨物専業のANA Cargoが始動2013年10月に設立し、2014年4月1日から営業を開始。社員約950人の体制で、貨物事業の企画から販売までを一体で運ぶ形にした。継続中
- 2016.10ANA X株式会社を設立ANAマイレージクラブを軸に顧客データを分析する新会社ANA Xを設立し、2016年12月1日に営業を開始してANA経済圏づくりを目指した。継続中
- 2017.02Peach株式を304億円で取得Peach Aviation株式を304億円で取得すると発表し、2017年4月10日付でPeachを連結子会社とする計画を示した。継続中
- 2018.03Peachとバニラエアの統合を決定グループ内のLCC2社の経営統合を決め、Peachを土台に1つにした。バニラエアは2019年度末に役目を終え、路線と機材をPeachへ引き継いだ。役目を終えた
- 2018.05宇宙機PDエアロに追加出資有人宇宙機の開発を進めるPDエアロスペースへ2億円を第三者割当増資で追加出資し、2016年の前回分と合わせて累計出資額は2億2040万円となった。継続中
- 2018.09JAXAとAVATAR Xを始動JAXAと共同で、宇宙空間でのアバター活用事業を考える「AVATAR X Program」を始動し、28社3団体が参加した。継続中
- 2020.04アバター新会社avatarinを設立遠隔操作ロボットで人を距離の制約から解き放つ事業を担う子会社avatarin株式会社を、資本金2億円で設立。ANA初のスタートアップとなった。継続中
- 2020.05エアロネクストと物流ドローンエアロネクストと物流ドローンの共同開発で業務提携し、2022年度の「空の産業革命レベル4」の実現に向けて2020年度内に実証実験を始める計画を示した。継続中
- 2020.12決済サービス「ANA Pay」開始日常の支払いでマイルが貯まるモバイル決済サービス「ANA Pay」を始め、1回のチャージ上限を10万円、利用上限を5万円とした。継続中
- 2021.07avatarinのベータ版を提供開始遠い場所を体感できる「瞬間移動サービス」avatarinのベータ版を2021年秋から提供開始し、月額料金は税込76,780円とした。継続中
- 2022.02米Jobyとエアタクシーで提携米Joby Aviationと手を組み、電動垂直離着陸機による日本での運航事業を共同で検討。2025年の大阪・関西万博を起点に運航を始めることを目指すとした。継続中
- 2023.01ECモール「ANA Mall」開店マイルが貯まる・使えるECモール「ANA Mall」を開き、初日は23店舗が出店。100円ごとに1マイルが貯まる仕組みとした。継続中
- 2023.02万博の空飛ぶクルマ運航事業者に大阪・関西万博で空飛ぶクルマの運航事業者に、Joby Aviationとともに選ばれ、最高時速320km・5人乗りの機体を運航する計画を立てた。継続中
- 2024.03イオンモールと離着陸場で提携空飛ぶクルマの離着陸場「バーティポート」の設置に向けてイオンモールと覚書を結び、2022年に提携した米Joby機材も活かして関東圏・関西圏での設置を目指すとした。継続中
- 2024.07avatarinに6社が37億円を出資オムロンベンチャーズやソフトバンクなど6社がavatarinへ総額37億円を出資し、AIロボットnewmeを軸に業界特化型のAIサービスづくりを進めるとした。継続中
- 2024.12Peachを完全子会社化ファーストイースタン社が持つ7%のPeach Aviation株式を取得し、ANAHDが全株式を持つ完全子会社とした。継続中
- 2025.08日本貨物航空を完全子会社化日本郵船から日本貨物航空(NCA)の全株式を2025年8月1日付で取得し、ANAの貨物事業と合わせて世界14位の輸送重量規模を目指すとした。継続中
- 2025.08Jobyと合弁会社設立を検討日本でのエアタクシー事業に向けて、Joby Aviationとの合弁会社設立の本格的な検討を始め、将来100機以上を導入する計画を示した。継続中
- 2026.03貨物3社の統合を決定ANA Cargo・日本貨物航空・NCA Japanの貨物事業3社を、2027年4月1日付で日本貨物航空を存続会社として1つにし、相乗効果300億円を掲げた。継続中
- 2026.08未来創造ファンドからOptQCへ出資光量子コンピュータを開発する会社へ出資。ファンドは規模80億円・運用期間10年で、グローバル・ブレインが無限責任組合員を務める継続中
- 2026.08ANA XとソフトバンクがANA光を開始ANA Xとソフトバンクが、ANAのマイルが貯まる家庭用インターネット「ANA光」「ANAホームWi-Fi」を始めた。ホームWi-Fiは1年続けると最大1万9,400マイルが貯まる。継続中
- 2026.08ロボットで空港の遠隔サポート開始ANAとavatarinが、ロボット「newme」を使い、関西空港から地方空港のお客様の問い合わせをサポートし始めた。羽田空港の約2.5万件の接客データで、解決率98.4%を確かめてから広げた。継続中
- 2026.09全日空商事がAKOMEYA TOKYOを取得9月15日発表。100%子会社の全日空商事が、お米を起点にした食の専門店AKOMEYA TOKYO(38店舗)の全株式をサザビーリーグから取得する契約を結んだ。10月30日までに取得完了の予定で、取得金額の記載はない継続中
- 2026.09新しい貨物航空会社の社名を決定2027年4月に3社を統合して発足する貨物航空会社の社名を「ANA Nippon Cargo Airlines」、ブランド名を「ANA Nippon Cargo」に決めた。社名の変更は2027年下期以降の予定。継続中
空飛ぶクルマとLCCは、組む相手と一緒に進めている
空飛ぶクルマの4件は、すべて米Joby Aviationとの取り組みだ。2022年2月に提携し、2023年2月に大阪・関西万博の運航事業者に選ばれ、2024年3月にはイオンモールと離着陸場の覚書を結んだ。2025年8月には、Jobyとの合弁会社の設立を本格的に検討し始め、将来100機以上を導入する計画を示している。
LCCの3件は、2017年にPeach株式を304億円で取得したところから始まる。2018年にPeachとバニラエアの統合を決め、2024年12月にはPeachを完全子会社にした。
ここまでを、ひとつにまとめると
ANAHDの24件でいちばん多いのはアバターロボットの5件です。2020年にANAHD発の初めてのスタートアップとしてavatarinをつくり、累計77億円を集めました。
2026年8月には、そのロボットが関西空港から地方空港のお客様を支えるところまで来ました。羽田空港の約2.5万件のデータで解決率98.4%を確かめてからの導入です。
挑戦する人の視点で見ると
ANAHDの24件から持ち帰れるのは、社内のプロジェクトを外に出し、育ってから本業の現場に戻すという道筋だと思う。
avatarinは、最初から空港のために作られたわけではない。宇宙のプログラム、医療施設、瞬間移動サービスと、場所を変えながら続き、外から資金を集めて、最後にANAの空港で使われるところまで来た。しかも、いきなり全国に広げず、羽田空港の約2.5万件で確かめてから、関西空港を拠点に地方空港へ広げている。
いま自分が担当なら、社内発の事業ごとに「最初に届けた相手」と「いま届けている相手」を並べて書いてみると思う。その2つが違っていても、線がつながっていれば、それは続いている事業だ。