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NEWFOR / 記事一覧 / #039 丸紅

丸紅は2013年、1社に27億ドルを入れた。
いまは2年4か月で13件。
グミも、コスメも入っている

27件の記録を並べると、買い方が途中で変わっているのが見えます。2013年は1社に27億米ドル。2024年4月からの2年4か月は13件。しかも中身が、穀物やインフラから、グミ・ルームシューズ・コスメといった生活のものへ寄っています。

Soichiro2026年9月20日じっくり読んで 約9分
記録した新規事業
27件
2012年3月の英シージャックス共同買収から、2026年9月のカギケノリ由来製品の戦略的パートナーシップまで、公開情報から拾って年表に並べた件数です
いま続いているもの
22件
27件のうち、公開情報で継続が確認できるもの。役目を終えた、または次へ渡したものが5件あります
2024年4月からの買収・出資
13件
2024年4月のイオシス出資から2026年7月のイオシス完全子会社化まで、2年4か月のあいだに記録された件数です
米ガビロンの取得価額
27億米ドル
2013年7月5日(米国東部時間)に取得を完了。2022年1月に穀物事業をバイテラへ渡しています
この記事はこんな方に
  • 買うか作るかで迷っている方へ。1件に大きく入れた年と、小さく数多く入れた年が、同じ年表の上で見比べられます
  • 投資の出口を考えている方へ。27億米ドルで買った事業を9年後に渡し、いくら回収する見込みと書いたかが読めます
  • 消費者向けの新規事業を担当する方へ。商社が2年4か月で買った13件の中身が、発表日つきで並びます
3行でいうと
  1. 丸紅は2013年7月5日(米国東部時間)、米穀物大手ガビロンの取得を約27億米ドルで完了した。集荷から輸出までを一貫して手がける体制を強める買収だった。
  2. その9年後の2022年1月26日、丸紅はガビロン穀物事業の全株式200株(議決権所有割合100%)をカナダのバイテラへ譲渡すると発表した。譲渡価格は実行後の純運転資本などをもとに決めるとしたうえで、資金回収の見込み額を3,000億円〜4,000億円程度と公表している。完了は2022年度中の予定だった。
  3. 2024年4月からの2年4か月に記録された買収・出資は13件ある。中古スマホのイオシス、ルームシューズの米R.G.バリー、食用油脂の米ゲムサ、英ジェイコブソン、コスメのエトヴォス。1件あたりの規模は小さくなり、中身は生活のものへ寄っている。

丸紅の年表27件を並べると、真ん中あたりで買い方が変わっている。

2013年は、1社に約27億米ドルを入れた。米穀物大手のガビロンである。

2024年4月からの2年4か月は、13件を買っている。中身はグミ、中古スマホ、ルームシューズ、オリーブオイル、コスメ。

この記事は2026年9月時点の公開情報にもとづきます。数値はすべて丸紅および各社の公表値です。

2013年、1社に約27億米ドル

2013年7月、丸紅は米ガビロン・ホールディングスの取得を完了した。取得価額は約27億米ドル。完了は2013年7月5日(米国東部時間)と発表されている。

ガビロンは米国の穀物大手で、この買収によって丸紅は穀物の集荷から輸出までを一貫して手がける体制を手に入れた。

同じころ、大きいものが他にも並ぶ。2012年3月には産業革新機構と共同で英国の洋上風力据付大手シージャックスを買い、2017年7月には米カンザス州の食肉加工大手クリークストーン(日量1,400頭の処理能力)を買っている。どれも、設備と量で勝負する事業である。

用語資金回収しきんかいしゅう

買って育てた事業を次へ渡し、その対価として現金を手元に戻すことです。商社は「渡して終わり」ではなく、戻したお金を次の投資に回すことを前提に発表資料へ回収見込み額を書きます。渡す判断と、次に買う判断は、同じ1本の線でつながっています。

実務のコツ

事業を渡すときの発表資料には、「いくら戻る見込みか」が書かれていることがある。渡した金額そのものより、この1行のほうが次の一手を読む手がかりになる。

CHART

事業稼働チャート

丸紅が2012年以降に記録した主な動きと、その期間
英シージャックス(洋上風力据付)2012–2021
米ガビロン(約27億米ドル)2013–2022
北米貨車リース(株式50%を譲渡)2012–2016
米クリークストーン(食肉加工)2017–
米エアキャッスル(航空機リース)2020–
シージャックス株(エネティへ)2012–2021
米B2U(蓄電池)2021–
ガビロン穀物事業(バイテラへ)2013–2022
英スコットランド洋上風力(最大2,600MW)2022–
トレードワルツ(貿易DX)2023–
明治産業(グミ・ラムネ)2023–
アルテリア(セコムと共同TOB)2023–
イオシス(中古スマホ)2024–
リンクウィズ(ロボット)2024–
みずほリース(20.00%取得)2024–
REVOX(AI製造DX)2024–
サンヴィレッジ(太陽光・20億円)2024–
米R.G.バリー(ルームシューズ)2024–
米ゲムサ(食用油脂)2024–
OSE(電子部品商社)2025–
中本・アンド・アソシエイツ(ERP)2025–
英ジェイコブソン(Gola)2026–
エトヴォス(コスメ)2026–
米イーグルリッジ(天然ガス)2026–
イオシスを完全子会社化2026–
MAIDOA AI ASSIST(データ分析基盤)2026–
カギケノリ由来製品 AlgaToro2026–
201220152018202120242027
継続中役目を終えた

2022年、その穀物事業を渡した

買ってから9年後。2022年1月26日、丸紅はガビロン穀物事業の全株式200株(議決権所有割合100%)を、カナダの穀物大手バイテラへ譲渡すると発表した。

譲渡価格は「本株式譲渡の実行後に譲渡時点の純運転資本及び純有利子負債等に基づき譲渡価格を決定」とされ、金額そのものは開示されていない。そのかわりに書かれているのが、資金回収の見込み額「3,000億円〜4,000億円程度」である。完了は2022年度中の予定だった。

同じころ、英シージャックスの全株式もエネティ社へ渡している(2021年8月、対価は同社株式)。2015年12月には北米の貨車リース子会社の株式50%を三井住友系の2社へ渡した。大きく買ったものが、順番に次の担い手へ移っている。

買った金額は約27億米ドル。渡すときに書かれたのは、3,000億〜4,000億円という「戻る見込み」だった

TIMELINE

未確認事業年表

丸紅が公開情報で発表した新規事業を、始めた順に
  • 2012.03英シージャックスを共同買収産業革新機構と共同で、英国の洋上風力発電設備の据付大手シージャックス・インターナショナル社の全株式を米投資ファンドのリバーストーン社から取得し、2021年にエネティ社へ譲渡した。役目を終えた
  • 2013.07米ガビロンを約27億ドルで買収米穀物大手ガビロン・ホールディングスの持分を約27億米ドルで取得し、穀物の集荷から輸出までを一貫して手がける体制を強めた。2022年に穀物事業をバイテラへ譲渡した。役目を終えた
  • 2015.12北米貨車リース株50%を譲渡子会社マルベニ・レール・トランスポート社の株式のうち19.9%を三井住友信託銀行へ、30.1%を三井住友トラスト・パナソニックファイナンスへ譲渡し、2016年に次へ渡した。役目を終えた
  • 2017.07米クリークストーンを買収カンザス州の食肉加工大手クリークストーン・ファームズ・プレミアム・ビーフ社を買収し、日量1400頭を処理する生産拠点を米国に確保した。継続中
  • 2020.03米エアキャッスルを完全子会社化みずほリースと共同で航空機リース大手エアキャッスル社の全株式を取得し、資本金約14.7億米ドルの同社を非公開にして子会社とした。継続中
  • 2021.08シージャックス株をエネティへ譲渡英国の洋上風力据付会社シージャックス・インターナショナルの全株式をエネティ社へ渡し、対価として同社の株式を引き受けた。2012年から手がけた据付事業を引き継いでもらう形とした。役目を終えた
  • 2021.10米B2Uに出資し蓄電池事業へ使い終えた車載蓄電池を定置型蓄電池として二度目に活かす米B2Uストレージ・ソリューションズ社へ出資し、蓄電池事業に加わった。継続中
  • 2022.01ガビロン穀物事業をバイテラへ譲渡保有するガビロン穀物事業の全株式200株をカナダの穀物大手バイテラへ譲渡し、3000億〜4000億円程度の資金回収を見込み、2022年度に次へ渡した。役目を終えた
  • 2022.01英スコットランド洋上風力に参画SSE Renewables、コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズとの3社連合で、最大2600MWの浮体式洋上風力の海域リース権益を落札した。継続中
  • 2023.01貿易DXのトレードワルツに出資貿易手続きのデジタル化を進めるトレードワルツへの出資に合意して払込みを終え、同社の累計調達額は40億円に達した。海外との連携強化を目指した。継続中
  • 2023.03菓子メーカー明治産業を買収株式会社明治から、グミやラムネ菓子を手がける明治産業の全株式と商標権を取得し、菓子の製造・受託生産事業に踏み出した。同社は長野県須坂市にある。継続中
  • 2023.07アルテリアにセコムと共同TOB子会社アルテリア・ネットワークスにセコムと共同で1株1980円の公開買付けを実施し、丸紅66.66%・セコム33.34%の比率で非公開とした。継続中
  • 2024.04中古スマホのイオシスに出資スマートフォンやIT機器の買取・販売を手がけるイオシスホールディングスへ出資し、国内の消費者向けIT機器リユース事業に踏み出した。継続中
  • 2024.05ロボットのリンクウィズに出資丸紅ベンチャーズが、3次元形状処理エンジンで産業用ロボットの自律化を進めるリンクウィズへ出資し、製造現場のDXを後押しした。継続中
  • 2024.05みずほリースと資本業務提携第三者割当増資の引受と相対取引での株式取得を合わせ、みずほリースの発行済株式の20.00%を保有し、同社を持分法適用関連会社とした。継続中
  • 2024.05AI製造DXのREVOXと資本提携見積・設計・調達を支えるAIクラウド「SellBOT」を展開するREVOXの第三者割当増資を引き受け、中小製造業のDX支援で手を組んだ。継続中
  • 2024.05太陽光のサンヴィレッジと資本提携丸紅新電力が、非FITの太陽光発電所を開発するサンヴィレッジの20億円の第三者割当増資を全額引き受け、再エネ電力の普及拡大で手を組んだ。継続中
  • 2024.06米R.G.バリーを買収し生活雑貨へルームシューズ「Dearfoams」を展開する米R.G.バリー社の発行済株式の過半数を取得し、米国のライフスタイルブランド事業に踏み出した。継続中
  • 2024.07米ゲムサを買収し食用油脂へオリーブオイルなど食用スペシャリティ油脂の加工・販売を手がける米ゲムサ・エンタープライズの発行済持分の過半数を取得し、新しい事業に踏み出した。継続中
  • 2025.04電子部品商社OSEを完全子会社化日本とASEANで半導体・電子部品を卸すオーエスエレクトロニクスの発行済株式100%を取得し、産業ソリューションの土台を強めた。継続中
  • 2025.07ERP企業の中本社を買収丸紅I-DIGIOホールディングスが、オラクル製クラウドERPの導入を専門とする中本・アンド・アソシエイツの株式を100%取得した。継続中
  • 2026.01英ジェイコブソンを買収傘下の米R.G.バリー社を通じ、フットウェアブランド「Gola」などを30か国以上で展開する英ジェイコブソン・グループを買収した。継続中
  • 2026.01コスメのエトヴォスを完全子会社化スキンケア・コスメブランドを運営するエトヴォスの発行済株式100%を取得して完全子会社とし、美容・ヘルス分野の土台をつくった。継続中
  • 2026.06米イーグルリッジを完全子会社化テキサス州バーネット・シェール層で日量約170MMcfeの天然ガスなどを生産するイーグルリッジ・エナジーIIの全持分を取得した。継続中
  • 2026.07イオシスを完全子会社化2024年の出資参画に続いて株式を追加取得し、創業30年・国内13店舗を展開するイオシスを完全子会社とした。代表取締役も交代した。継続中
  • 2026.08データ分析基盤 MAIDOA AI ASSIST を提供開始8月4日発表。丸紅ネットワークソリューションズが、SQLの専門知識がなくても対話でデータ分析ができる基盤を9月1日から提供する。既存のTRASCOPE-AIなどとデータをつなぐ。継続中
  • 2026.09カギケノリ由来製品で戦略的パートナーシップ9月14日発表。丸紅イノベクシスがSeastock、日本甜菜製糖と契約を締結。海藻カギケノリ由来のブロモホルム製品「AlgaToro」を日本市場へ展開し、反芻動物のメタン排出の低減をめざす継続中

2024年4月から、13件

ここから記録の密度が変わる。

2024年4月のイオシスへの出資から、2026年7月のイオシス完全子会社化まで。この2年4か月に13件が並んでいる。おおよそ2か月に1件のペースである。

2024年5月だけで4件ある。ロボットのリンクウィズ(丸紅ベンチャーズ)、みずほリース(発行済株式の20.00%を取得し持分法適用関連会社化)、AI製造DXのREVOX、太陽光のサンヴィレッジ(丸紅新電力が20億円の第三者割当増資を全額引受)。

買っているものが、生活のほうへ寄っている

13件に、その少し前の1件を足して並べると、傾向がはっきりする。

2023年3月、明治産業。株式会社明治から、グミやラムネ菓子を手がける会社の全株式と商標権を取得した。長野県須坂市にある会社である。

2024年4月、イオシス。中古スマートフォンやIT機器の買取・販売。2026年7月に追加取得して完全子会社にした。創業30年、国内13店舗。

2024年6月、米R.G.バリー。ルームシューズ「Dearfoams」の会社で、発行済株式の過半数を取得した。2026年1月には、そのR.G.バリーを通じて英ジェイコブソン・グループを買っている。フットウェアブランド「Gola」などを30か国以上で展開する会社である。

2024年7月、米ゲムサ。オリーブオイルなど食用スペシャリティ油脂の加工・販売。2026年1月、エトヴォス。スキンケア・コスメブランドの発行済株式100%を取得した。

新規事業マニアの解説

ここまでを、ひとつにまとめると

2013年の1件は約27億米ドル、つまり1件で数千億円でした。2024年4月からの13件は、金額が公表されているものが少なく、公表されているサンヴィレッジは20億円です。桁が2つ以上ちがいます。

そして中身が、穀物・洋上風力・貨車・食肉といった「量と設備」のものから、グミ・スマホ・靴・油・化粧品という「棚に並ぶもの」へ移っています。同じ会社の年表なのに、前半と後半で読み味が変わります。

大きいものも、同時に続いている

ただし、小さく数多く買うようになった、という話だけではない。

2020年3月、米エアキャッスル。みずほリースと共同で航空機リース大手の全株式を取得し、資本金約14.7億米ドルの同社を非公開にして子会社にした。

2023年7月、アルテリア・ネットワークス。子会社にセコムと共同で1株1,980円の公開買付けを実施し、丸紅66.66%・セコム33.34%の比率で非公開にしている。

2026年6月、米イーグルリッジ・エナジーII。テキサス州バーネット・シェール層で日量約170MMcfeの天然ガスなどを生産する会社の全持分を取得した。2022年1月には、SSE Renewables、コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズとの3社連合で最大2,600MWの浮体式洋上風力の海域リース権益を落札している。

挑戦する人の視点で見ると

丸紅の27件から持ち帰れるものは、「大きい1件」と「小さい13件」を、同じ会社が同じ時期にやっているという点だと思う。

どちらかに寄せた、という話ではない。航空機リースや洋上風力は続けたまま、その横でグミとコスメを買っている。片方が正しくて、もう片方が間違っているのではなく、置き場所が違うだけである。

そして渡すときの書き方が一貫している。ガビロン穀物事業の発表では、譲渡額ではなく「3,000億〜4,000億円程度の資金回収見込み」を書いた。渡すことが、次に買うことの前提として説明されている。

いま自分が担当なら、投資の一覧に「これは何年後に、いくら戻す前提か」の列を足すと思う。丸紅の年表は、その列を持っている会社の記録に見える。

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この記録がどう受け取られたのかを、みんなで確かめる場所です。

NEWFOR MEMO
新規事業マニアのメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「渡すときに、戻る見込み額を書く」という作法だと思う。

2013年7月5日(米国東部時間)、米ガビロンの取得完了。約27億米ドル。穀物の集荷から輸出までを一貫して手がける体制を取りにいった買収である。

2022年1月26日、ガビロン穀物事業の全株式200株(議決権所有割合100%)をバイテラへ。譲渡価額は実行後に決める形で、発表に書かれているのは「3,000億円〜4,000億円程度」の資金回収見込みのほう。完了は2022年度中の予定。

2024年4月からの2年4か月で13件。2024年5月だけで4件(リンクウィズ、みずほリース20.00%、REVOX、サンヴィレッジ20億円)。金額が公表されている数少ない例がサンヴィレッジの20億円で、2013年の1件とは桁が2つ以上ちがう。

中身の移り方も記録に残っている。グミ(明治産業・2023年)、中古スマホ(イオシス・2024年/2026年に完全子会社化)、ルームシューズ(R.G.バリー・2024年)、オリーブオイル(ゲムサ・2024年)、Gola(ジェイコブソン・2026年)、コスメ(エトヴォス・2026年)。

最後に対比。同じ時期にエアキャッスル(資本金約14.7億米ドル)、アルテリア(1株1,980円で共同TOB、丸紅66.66%)、イーグルリッジ(日量約170MMcfe)も続いている。大きいものをやめて小さいものに移ったのではなく、両方が並んでいる。

Soichiro新規事業マニア
40代 / 事業開発
新規事業マニア。20代でスタートアップを立ち上げ、1社を上場企業へ売却。その後、外資系コンサルティングファーム、通信大手、大手人材グループ、国内大手ITサービスの中で、社員として新規事業の立ち上げに携わる。並行して顧問として10社近くの新規事業を担当。事業立ち上げ歴20年。名前は、本田宗一郎への敬意から。
20年 事業立ち上げ歴1社 上場企業へ売却4社 事業会社の中で立ち上げ10社 顧問として担当