オムロンの年表25件を、中身ごとに分けてみた。
いちばん多いのは健康で、10件ある。次が工場の自動化で6件。エネルギーと本社まわりが3件ずつ。そして、次へ渡したものが3件。
渡した3件を並べると、共通点がひとつあった。
健康の10件は、14年かけて積まれた
健康にかかわる最初の1件は、2012年7月のNTTドコモとの合弁「ドコモ・ヘルスケア」である。健康支援サービスの企画・開発・提供を始めた。
そこから、形を変えながら続いていく。2017年3月に心房細動の診断・治療支援の米AliveCorと資本業務提携。2019年2月にシンガポールのiAPPSと合弁でHeartVoiceを設立し、企業向けの社員健康管理へ。2022年2月に医療統計データのJMDCと資本業務提携。2023年4月にインドで心電図の解析を手がけるトライコグへ出資。
2023年9月から10月にかけて、JMDCへの公開買付けを行い、子会社にした。1株5,700円で15,000,000株、対象者株式の買付代金は85,500百万円。買付け後の議決権所有割合は54.57%の予定と発表している。2022年の資本業務提携から1年8か月後である。
その後も、2024年4月にオランダで遠隔診療を手がけるLusciiを完全子会社化、2025年9月に産業保健・健康経営のiCAREの全株式を取得。2026年6月には、オムロン ヘルスケアが血圧計の腕帯をつくる松屋アールアンドディへの公開買付けを成立させた。1株1,110円で、買付け後の所有割合は95.88%。2026年8月には、血圧のデータと食事のデータを組み合わせるモニター調査を始めている。
株式を買いたい会社が、価格・株数・期間を公表して、株主から市場の外でまとめて買い取るやり方です。JMDCは1株5,700円、松屋アールアンドディは1株1,110円で行われました。
提携と子会社化の間に、どれだけの時間があるかを年表で数えておく。JMDCは資本業務提携から公開買付けまで1年8か月、iCAREは2024年7月の資本業務提携から2025年9月の全株式の取得まで1年2か月。オムロンは、組んでから迎え入れるまでに1年以上を置いている。
事業稼働チャート
渡した3件は、すべて部品だった
次へ渡したものは3件ある。
2019年4月、車載電子部品事業。子会社オムロン オートモーティブエレクトロニクスの全株式を日本電産へ譲渡することを決めた。
2021年6月、半導体・MEMS事業。半導体・MEMSの工場と、MEMSの開発・生産の機能をミツミ電機へ譲渡すると発表した。
2026年3月、電子部品事業。デバイス&モジュールソリューションビジネスを会社分割し、承継会社の全株式を米カーライル・グループが設立する会社へ譲渡すると発表した。譲渡事業価値は81,000百万円。吸収分割の効力発生日は2026年7月1日、株式譲渡の実行日は2026年10月1日の予定である。
3件とも、部品をつくる事業である。車載の電子部品、半導体とMEMS、そして電子部品。オムロンは部品の事業を、7年かけて3回に分けて渡した。
3件目の発表で、オムロンは理由を書いている。想定以上に迅速かつ大規模な投資が必要であることを再認識し、カーライルへ譲渡することが最適であるとの結論に至ったという。これはその事業にとって最適な成長環境を整えることでもある、としている。
買った最大はJMDCの855億円。渡した最大は電子部品事業の810億円。同じくらいの大きさの2件が、年表の両側にある
未確認事業年表
- 2011.05NTT西日本と省エネ支援で合弁NTT西日本と合弁会社「株式会社NTTスマイルエナジー」を2011年6月1日に設立し、7月から営業を始めることで合意。家庭向けの省エネ支援サービス事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
- 2012.07ドコモと健康支援で合弁設立NTTドコモと合弁会社「ドコモ・ヘルスケア株式会社」を設立し、健康支援サービスの企画・開発・提供事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
- 2015.09米デルタタウを買収し制御強化米デルタタウ データ システムズ社の発行済み全株式の取得を終え、モーション制御技術の分野で事業の土台を強めたと発表した。継続中
- 2015.09米アデプトを買収しロボットへ米国の産業用ロボットメーカー、アデプト テクノロジー社を買収する契約を結び、ロボット技術による「新しい省人化」を目指した。継続中
- 2017.03米AliveCorと資本業務提携米国で心房細動の診断・治療支援サービスを手がけるAliveCor, Inc.と資本・業務提携で合意し、ヘルスケア分野を強めた。継続中
- 2017.04産業用カメラのセンテックを買収産業用カメラの有力メーカーであるセンテック社を買収し、画像情報を使ったものづくり現場の作り替えを目指すと正式に発表した。継続中
- 2017.08米マイクロスキャンを買収産業用コードリーダー大手の米マイクロスキャン システムズ社を買収し、製造現場のIoT化を進める体制を新たに整えたと発表した。継続中
- 2019.02iAPPSと合弁HeartVoice設立シンガポールのiAPPS社と合弁会社「HeartVoice」を設立し、企業向けの社員健康管理サービス事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
- 2019.02SolarEdgeと太陽光で協業イスラエルのSolarEdge Technologies社と手を組み、国内の太陽光発電市場に向けたソリューションの提供を始めた。継続中
- 2019.04車載電子部品事業を日本電産へ子会社オムロン オートモーティブエレクトロニクスの全株式を日本電産へ譲渡することを決議し、2019年に車載電子部品事業を次へ渡した。役目を終えた
- 2021.06半導体・MEMS事業をミツミへ半導体・MEMS工場とMEMSの開発・生産機能をミツミ電機へ譲渡すると発表し、2021年に自社での事業運営を終えた。役目を終えた
- 2022.02JMDCと資本業務提携医療統計データサービスを手がける株式会社JMDCと資本業務提携契約を結び、医療データを使った新しいサービス開発を目指した。継続中
- 2023.04インドのトライコグに出資インドで心電図の解析サービスを手がけるトライコグに出資し、通信機能付き心電計とAI解析を組み合わせた遠隔診療サービスの開発に着手した。継続中
- 2023.09JMDCをTOBで子会社化株式会社JMDCに対して公開買付けを実施し、1株5700円・最大約855億円で買い付け、連結子会社として新たに迎え入れた。継続中
- 2023.10ソルティスターに約48%出資長野県のソルティスター株式会社に対し、約48%の出資比率で出資する契約に合意し、製造現場のデータ統合技術の分野で手を組んだ。継続中
- 2024.04蘭Lusciiを完全子会社化オランダで遠隔診療サービスを手がけるLuscii healthtech B.V.の発行済株式のすべてを取得し、完全子会社とした。継続中
- 2024.12福利厚生のHQに出資オムロンベンチャーズが、次世代の福利厚生基盤「カフェテリアHQ」を展開する株式会社HQへ新たに出資したと発表した。継続中
- 2025.02トランスコスモスと合弁設立トランスコスモスと合弁会社「オムロン トランスコスモス プロセスイノベーション」を設立し、人事・経理などの間接業務を1つに集めた。継続中
- 2025.09iCAREを完全子会社化産業保健・健康経営ソリューションを手がけるiCARE社の全株式を取得する株式譲渡契約を結び、コーポレートヘルス事業を強めた。継続中
- 2025.12分散型電源のグリッドシェアへ出資12月4日発表。オムロン ソーシアルソリューションズが、伊藤忠商事グループのグリッドシェアジャパンが展開する分散型電源プラットフォーム「GridShare」事業に出資参画した。九州電力など5つの会社が新たに株主に加わり、蓄電池の群制御を使ったVPP事業と市場取引の実証を進める。継続中
- 2026.03電子部品事業を米カーライルへデバイス&モジュールソリューション事業を会社分割し、事業価値810億円で米カーライル・グループへ株式を譲渡すると発表。2026年に創業の事業を次へ渡した。役目を終えた
- 2026.06腕帯の松屋R&DをTOBで子会社化6月16日発表。オムロン ヘルスケアが、血圧計の腕帯をつくる松屋アールアンドディへの公開買付けを成立させた。1株1,110円で応募された17,567,455株をすべて買い付け、所有割合は95.88%。残りも取得し、完全子会社とする。継続中
- 2026.06製造DXのSmart Craftへ出資6月11日発表。オムロンベンチャーズが、作業指示から実績の集計までを一つで管理する製造現場DXのプラットフォームを手がける株式会社Smart Craftと出資契約を結んだ。継続中
- 2026.07オムロン プロフェッショナルネクサスを設立7月1日発表。本社機能の高度専門業務を集約する新会社。AIを使った業務改革で生産性2倍をめざすと公表した継続中
- 2026.08血圧と食事のデータで実証を開始8月17日発表。オムロン ヘルスケアが食事管理アプリ「カロミル」のライフログテクノロジーと組み、利用者300名を対象に約4週間のモニター調査を始めた。継続中
工場の6件は、2015年と2017年の4件から始まった
工場の自動化にかかわるものは6件ある。
最初の4件は2015年と2017年に集まっている。2015年9月に米デルタタウ データ システムズ(モーション制御)の全株式の取得を終え、同じ月に米アデプト テクノロジー(産業用ロボット)の買収契約を結んだ。2017年4月に産業用カメラのセンテック、2017年8月に産業用コードリーダーの米マイクロスキャン システムズを買収した。
その後は、出資で小さく組む形に変わる。2023年10月に製造現場のデータ統合技術をもつ長野県のソルティスターへ出資。2026年6月には、オムロンベンチャーズが製造現場DXのプラットフォームを手がけるSmart Craftと出資契約を結んだ。
エネルギーの3件と、本社まわりの3件
エネルギーは3件。2011年5月のNTT西日本との省エネ支援の合弁「NTTスマイルエナジー」、2019年2月のイスラエルのSolarEdgeとの太陽光での協業、2025年12月のグリッドシェア事業への出資参画。3件目は、オムロン ソーシアルソリューションズが、蓄電池の群制御を使ったVPP事業と市場取引の実証を進めるためのものである。
本社まわりも3件。2024年12月にオムロンベンチャーズが福利厚生の基盤を展開するHQへ出資。2025年2月にトランスコスモスと合弁を設立し、人事・経理などの間接業務を1つに集めた。2026年7月には、本社機能の高度専門業務を集める新会社を設立し、AIを使った業務改革で生産性2倍をめざすとしている。
ここまでを、ひとつにまとめると
25件のうち健康が10件、工場の自動化が6件、エネルギーが3件、本社まわりが3件、渡したものが3件です。
金額が発表に載っている大きなものは2件。買った側はJMDCの85,500百万円、渡した側は電子部品事業の81,000百万円。健康へ入った金額と、部品から出た金額が、ほぼ同じ大きさで並んでいます。
挑戦する人の視点で見ると
オムロンの25件から持ち帰れるのは、「育てる分野と渡す分野を、中身で分けて持つ」ということだと思う。
健康の10件は、合弁、提携、出資、公開買付け、完全子会社化と、形がすべて違う。同じ分野に、違う入り方で14年通っている。一方で、部品の3件は、7年かけて順番に渡した。
そして、健康の入り方には順番がある。JMDCもiCAREも、先に資本業務提携を結び、1年以上たってから全体を迎え入れている。いきなり買うのではなく、組んでから決めている。
いま自分が担当なら、年表を分野ごとの列に並べ直すところから始めると思う。オムロンの年表は、健康の列が長く伸び、部品の列が3つで閉じている記録である。