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オムロンの25件のうち、10件は健康に向いている。
次へ渡した3件は、すべて部品の事業だった

25件を中身で分けると、健康が10件でいちばん多くなります。そして、次へ渡した3件は、どれも部品をつくる事業でした。買った最大の金額と、渡した最大の金額は、855億円と810億円。ほぼ同じ大きさです。

Soichiro2026年9月24日じっくり読んで 約8分
記録した新規事業
25件
2011年5月のNTT西日本との省エネ支援の合弁から、2026年8月の血圧と食事のデータの実証まで、公開情報から拾って年表に並べた件数です
健康にかかわる件数
10件
25件のうち、健康支援・遠隔診療・医療データ・産業保健・血圧計にかかわるもの。2012年のドコモとの合弁から2026年まで続いています
JMDCの公開買付けの買付代金
855億円
2023年10月11日の公開買付けの結果。1株5,700円で15,000,000株、対象者株式の買付代金は85,500百万円。買付け後の議決権所有割合は54.57%の予定と発表しています
電子部品事業の譲渡事業価値
810億円
2026年3月30日の発表。デバイス&モジュールソリューションビジネスを会社分割し、承継会社の全株式を米カーライルへ。譲渡事業価値は81,000百万円、株式譲渡の実行は2026年10月1日の予定です
この記事はこんな方に
  • 健康の事業を任された方へ。合弁、出資、公開買付け、完全子会社化と、14年で10件がどんな形で積まれたかが並びます
  • 工場の自動化で出資先を探している方へ。米国の制御・ロボット・コードリーダーの買収から、国内の製造DXへの出資まで6件がわかります
  • 創業の事業を渡す判断を考えている方へ。部品の事業を3回に分けて渡した順番と、最後の1件の事業価値810億円が読めます
3行でいうと
  1. オムロンの年表25件を中身で分けると、健康にかかわるものが10件でいちばん多い。2012年のドコモとの合弁「ドコモ・ヘルスケア」から、2023年のJMDCの子会社化、2026年の血圧計の腕帯をつくる松屋アールアンドディの子会社化まで、14年にわたって続いている。
  2. 次へ渡した3件は、2019年の車載電子部品事業(日本電産へ)、2021年の半導体・MEMS事業(ミツミ電機へ)、2026年の電子部品事業(米カーライルへ)で、いずれも部品の事業である。最後の1件の譲渡事業価値は81,000百万円。
  3. 買った側の最大はJMDCの公開買付けで、対象者株式の買付代金は85,500百万円。渡した側の最大の810億円とほぼ同じ大きさである。残りは工場の自動化が6件、エネルギーが3件、本社まわりが3件。

オムロンの年表25件を、中身ごとに分けてみた。

いちばん多いのは健康で、10件ある。次が工場の自動化で6件。エネルギーと本社まわりが3件ずつ。そして、次へ渡したものが3件。

渡した3件を並べると、共通点がひとつあった。

この記事は2026年9月時点の公開情報にもとづきます。数値はすべてオムロンおよび各社の公表値です。

健康の10件は、14年かけて積まれた

健康にかかわる最初の1件は、2012年7月のNTTドコモとの合弁「ドコモ・ヘルスケア」である。健康支援サービスの企画・開発・提供を始めた。

そこから、形を変えながら続いていく。2017年3月に心房細動の診断・治療支援の米AliveCorと資本業務提携。2019年2月にシンガポールのiAPPSと合弁でHeartVoiceを設立し、企業向けの社員健康管理へ。2022年2月に医療統計データのJMDCと資本業務提携。2023年4月にインドで心電図の解析を手がけるトライコグへ出資。

2023年9月から10月にかけて、JMDCへの公開買付けを行い、子会社にした。1株5,700円で15,000,000株、対象者株式の買付代金は85,500百万円。買付け後の議決権所有割合は54.57%の予定と発表している。2022年の資本業務提携から1年8か月後である。

その後も、2024年4月にオランダで遠隔診療を手がけるLusciiを完全子会社化、2025年9月に産業保健・健康経営のiCAREの全株式を取得。2026年6月には、オムロン ヘルスケアが血圧計の腕帯をつくる松屋アールアンドディへの公開買付けを成立させた。1株1,110円で、買付け後の所有割合は95.88%。2026年8月には、血圧のデータと食事のデータを組み合わせるモニター調査を始めている。

用語公開買付け(TOB)こうかいかいつけ

株式を買いたい会社が、価格・株数・期間を公表して、株主から市場の外でまとめて買い取るやり方です。JMDCは1株5,700円、松屋アールアンドディは1株1,110円で行われました。

実務のコツ

提携と子会社化の間に、どれだけの時間があるかを年表で数えておく。JMDCは資本業務提携から公開買付けまで1年8か月、iCAREは2024年7月の資本業務提携から2025年9月の全株式の取得まで1年2か月。オムロンは、組んでから迎え入れるまでに1年以上を置いている。

CHART

事業稼働チャート

オムロンが2011年以降に記録した主な動きと、その期間
NTT西日本と省エネ支援で合弁2011–
ドコモと健康支援で合弁設立2012–
米デルタタウを買収し制御強化2015–
米アデプトを買収しロボットへ2015–
米AliveCorと資本業務提携2017–
産業用カメラのセンテックを買収2017–
米マイクロスキャンを買収2017–
iAPPSと合弁HeartVoice設立2019–
SolarEdgeと太陽光で協業2019–
車載電子部品事業を日本電産へ2019–2019
半導体・MEMS事業をミツミへ2021–2021
JMDCと資本業務提携2022–
インドのトライコグに出資2023–
JMDCをTOBで子会社化2023–
ソルティスターに約48%出資2023–
蘭Lusciiを完全子会社化2024–
福利厚生のHQに出資2024–
トランスコスモスと合弁設立2025–
iCAREを完全子会社化2025–
分散型電源のグリッドシェアへ出資2025–
電子部品事業を米カーライルへ2026–2026
腕帯の松屋R&DをTOBで子会社化2026–
製造DXのSmart Craftへ出資2026–
オムロン プロフェッショナルネクサスを設立2026–
血圧と食事のデータで実証を開始2026–
201120142017202020232026
継続中役目を終えた

渡した3件は、すべて部品だった

次へ渡したものは3件ある。

2019年4月、車載電子部品事業。子会社オムロン オートモーティブエレクトロニクスの全株式を日本電産へ譲渡することを決めた。

2021年6月、半導体・MEMS事業。半導体・MEMSの工場と、MEMSの開発・生産の機能をミツミ電機へ譲渡すると発表した。

2026年3月、電子部品事業。デバイス&モジュールソリューションビジネスを会社分割し、承継会社の全株式を米カーライル・グループが設立する会社へ譲渡すると発表した。譲渡事業価値は81,000百万円。吸収分割の効力発生日は2026年7月1日、株式譲渡の実行日は2026年10月1日の予定である。

3件とも、部品をつくる事業である。車載の電子部品、半導体とMEMS、そして電子部品。オムロンは部品の事業を、7年かけて3回に分けて渡した。

3件目の発表で、オムロンは理由を書いている。想定以上に迅速かつ大規模な投資が必要であることを再認識し、カーライルへ譲渡することが最適であるとの結論に至ったという。これはその事業にとって最適な成長環境を整えることでもある、としている。

買った最大はJMDCの855億円。渡した最大は電子部品事業の810億円。同じくらいの大きさの2件が、年表の両側にある

TIMELINE

未確認事業年表

オムロンが公開情報で発表した新規事業を、始めた順に
  • 2011.05NTT西日本と省エネ支援で合弁NTT西日本と合弁会社「株式会社NTTスマイルエナジー」を2011年6月1日に設立し、7月から営業を始めることで合意。家庭向けの省エネ支援サービス事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
  • 2012.07ドコモと健康支援で合弁設立NTTドコモと合弁会社「ドコモ・ヘルスケア株式会社」を設立し、健康支援サービスの企画・開発・提供事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
  • 2015.09米デルタタウを買収し制御強化米デルタタウ データ システムズ社の発行済み全株式の取得を終え、モーション制御技術の分野で事業の土台を強めたと発表した。継続中
  • 2015.09米アデプトを買収しロボットへ米国の産業用ロボットメーカー、アデプト テクノロジー社を買収する契約を結び、ロボット技術による「新しい省人化」を目指した。継続中
  • 2017.03米AliveCorと資本業務提携米国で心房細動の診断・治療支援サービスを手がけるAliveCor, Inc.と資本・業務提携で合意し、ヘルスケア分野を強めた。継続中
  • 2017.04産業用カメラのセンテックを買収産業用カメラの有力メーカーであるセンテック社を買収し、画像情報を使ったものづくり現場の作り替えを目指すと正式に発表した。継続中
  • 2017.08米マイクロスキャンを買収産業用コードリーダー大手の米マイクロスキャン システムズ社を買収し、製造現場のIoT化を進める体制を新たに整えたと発表した。継続中
  • 2019.02iAPPSと合弁HeartVoice設立シンガポールのiAPPS社と合弁会社「HeartVoice」を設立し、企業向けの社員健康管理サービス事業に新しく踏み出すと発表した。継続中
  • 2019.02SolarEdgeと太陽光で協業イスラエルのSolarEdge Technologies社と手を組み、国内の太陽光発電市場に向けたソリューションの提供を始めた。継続中
  • 2019.04車載電子部品事業を日本電産へ子会社オムロン オートモーティブエレクトロニクスの全株式を日本電産へ譲渡することを決議し、2019年に車載電子部品事業を次へ渡した。役目を終えた
  • 2021.06半導体・MEMS事業をミツミへ半導体・MEMS工場とMEMSの開発・生産機能をミツミ電機へ譲渡すると発表し、2021年に自社での事業運営を終えた。役目を終えた
  • 2022.02JMDCと資本業務提携医療統計データサービスを手がける株式会社JMDCと資本業務提携契約を結び、医療データを使った新しいサービス開発を目指した。継続中
  • 2023.04インドのトライコグに出資インドで心電図の解析サービスを手がけるトライコグに出資し、通信機能付き心電計とAI解析を組み合わせた遠隔診療サービスの開発に着手した。継続中
  • 2023.09JMDCをTOBで子会社化株式会社JMDCに対して公開買付けを実施し、1株5700円・最大約855億円で買い付け、連結子会社として新たに迎え入れた。継続中
  • 2023.10ソルティスターに約48%出資長野県のソルティスター株式会社に対し、約48%の出資比率で出資する契約に合意し、製造現場のデータ統合技術の分野で手を組んだ。継続中
  • 2024.04蘭Lusciiを完全子会社化オランダで遠隔診療サービスを手がけるLuscii healthtech B.V.の発行済株式のすべてを取得し、完全子会社とした。継続中
  • 2024.12福利厚生のHQに出資オムロンベンチャーズが、次世代の福利厚生基盤「カフェテリアHQ」を展開する株式会社HQへ新たに出資したと発表した。継続中
  • 2025.02トランスコスモスと合弁設立トランスコスモスと合弁会社「オムロン トランスコスモス プロセスイノベーション」を設立し、人事・経理などの間接業務を1つに集めた。継続中
  • 2025.09iCAREを完全子会社化産業保健・健康経営ソリューションを手がけるiCARE社の全株式を取得する株式譲渡契約を結び、コーポレートヘルス事業を強めた。継続中
  • 2025.12分散型電源のグリッドシェアへ出資12月4日発表。オムロン ソーシアルソリューションズが、伊藤忠商事グループのグリッドシェアジャパンが展開する分散型電源プラットフォーム「GridShare」事業に出資参画した。九州電力など5つの会社が新たに株主に加わり、蓄電池の群制御を使ったVPP事業と市場取引の実証を進める。継続中
  • 2026.03電子部品事業を米カーライルへデバイス&モジュールソリューション事業を会社分割し、事業価値810億円で米カーライル・グループへ株式を譲渡すると発表。2026年に創業の事業を次へ渡した。役目を終えた
  • 2026.06腕帯の松屋R&DをTOBで子会社化6月16日発表。オムロン ヘルスケアが、血圧計の腕帯をつくる松屋アールアンドディへの公開買付けを成立させた。1株1,110円で応募された17,567,455株をすべて買い付け、所有割合は95.88%。残りも取得し、完全子会社とする。継続中
  • 2026.06製造DXのSmart Craftへ出資6月11日発表。オムロンベンチャーズが、作業指示から実績の集計までを一つで管理する製造現場DXのプラットフォームを手がける株式会社Smart Craftと出資契約を結んだ。継続中
  • 2026.07オムロン プロフェッショナルネクサスを設立7月1日発表。本社機能の高度専門業務を集約する新会社。AIを使った業務改革で生産性2倍をめざすと公表した継続中
  • 2026.08血圧と食事のデータで実証を開始8月17日発表。オムロン ヘルスケアが食事管理アプリ「カロミル」のライフログテクノロジーと組み、利用者300名を対象に約4週間のモニター調査を始めた。継続中

工場の6件は、2015年と2017年の4件から始まった

工場の自動化にかかわるものは6件ある。

最初の4件は2015年と2017年に集まっている。2015年9月に米デルタタウ データ システムズ(モーション制御)の全株式の取得を終え、同じ月に米アデプト テクノロジー(産業用ロボット)の買収契約を結んだ。2017年4月に産業用カメラのセンテック、2017年8月に産業用コードリーダーの米マイクロスキャン システムズを買収した。

その後は、出資で小さく組む形に変わる。2023年10月に製造現場のデータ統合技術をもつ長野県のソルティスターへ出資。2026年6月には、オムロンベンチャーズが製造現場DXのプラットフォームを手がけるSmart Craftと出資契約を結んだ。

エネルギーの3件と、本社まわりの3件

エネルギーは3件。2011年5月のNTT西日本との省エネ支援の合弁「NTTスマイルエナジー」、2019年2月のイスラエルのSolarEdgeとの太陽光での協業、2025年12月のグリッドシェア事業への出資参画。3件目は、オムロン ソーシアルソリューションズが、蓄電池の群制御を使ったVPP事業と市場取引の実証を進めるためのものである。

本社まわりも3件。2024年12月にオムロンベンチャーズが福利厚生の基盤を展開するHQへ出資。2025年2月にトランスコスモスと合弁を設立し、人事・経理などの間接業務を1つに集めた。2026年7月には、本社機能の高度専門業務を集める新会社を設立し、AIを使った業務改革で生産性2倍をめざすとしている。

新規事業マニアの解説

ここまでを、ひとつにまとめると

25件のうち健康が10件、工場の自動化が6件、エネルギーが3件、本社まわりが3件、渡したものが3件です。

金額が発表に載っている大きなものは2件。買った側はJMDCの85,500百万円、渡した側は電子部品事業の81,000百万円。健康へ入った金額と、部品から出た金額が、ほぼ同じ大きさで並んでいます。

挑戦する人の視点で見ると

オムロンの25件から持ち帰れるのは、「育てる分野と渡す分野を、中身で分けて持つ」ということだと思う。

健康の10件は、合弁、提携、出資、公開買付け、完全子会社化と、形がすべて違う。同じ分野に、違う入り方で14年通っている。一方で、部品の3件は、7年かけて順番に渡した。

そして、健康の入り方には順番がある。JMDCもiCAREも、先に資本業務提携を結び、1年以上たってから全体を迎え入れている。いきなり買うのではなく、組んでから決めている。

いま自分が担当なら、年表を分野ごとの列に並べ直すところから始めると思う。オムロンの年表は、健康の列が長く伸び、部品の列が3つで閉じている記録である。

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この記録がどう受け取られたのかを、みんなで確かめる場所です。

NEWFOR MEMO
新規事業マニアのメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「同じ分野に、違う形で通い続ける」という一点だと思う。

健康の10件(2012年7月〜2026年8月)は、合弁・資本業務提携・出資・公開買付け・完全子会社化。形が1件ずつ違う。

2023年10月 JMDC:1株5,700円で15,000,000株、買付代金85,500百万円。2026年6月 松屋アールアンドディ:1株1,110円、所有割合95.88%。

渡した3件は、車載電子部品(2019年)、半導体・MEMS(2021年)、電子部品(2026年、譲渡事業価値81,000百万円)。すべて部品の事業。

最後に注意点。松屋アールアンドディの買付代金の総額は、発表に記載がない。開始予定の発表にあるのは「約205億円を上限にオムロン株式会社から借り入れる予定」という資金の手当てで、買付代金そのものではないので、見出しには使っていない。

Soichiro新規事業マニア
40代 / 事業開発
新規事業マニア。20代でスタートアップを立ち上げ、1社を上場企業へ売却。その後、外資系コンサルティングファーム、通信大手、大手人材グループ、国内大手ITサービスの中で、社員として新規事業の立ち上げに携わる。並行して顧問として10社近くの新規事業を担当。事業立ち上げ歴20年。名前は、本田宗一郎への敬意から。
20年 事業立ち上げ歴1社 上場企業へ売却4社 事業会社の中で立ち上げ10社 顧問として担当