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双日の29件のうち、7件はオーストラリア。
2023年5月に中古車と空調の会社を2日続けて迎え、2025年12月には公共交通まで広げた

29件を中身で分けると、エネルギーと環境10件、食と暮らし7件、インフラと素材5件、自動車販売4件、次へ渡したもの3件になります。国で見るといちばん多いのはオーストラリアの7件で、中古車、空調、インフラ開発、電力小売、公共交通、ガリウムと、一つの国の中で領域を横に広げています。

Soichiro2026年10月5日じっくり読んで 約8分
記録した新規事業
29件
2023年2月のBYDの正規ディーラー事業への参入から、2026年10月の英国の水産物加工・販売会社の買収まで、双日のニュースリリースから拾って年表に並べた件数です
オーストラリアの案件
7件
2023年5月の中古車販売会社と空調会社から、2026年7月のガリウム生産の正式決定まで
エネルギーと環境の案件
10件
省エネルギー、電力小売、バイオメタン、大気からのCO2回収、森林ファンド、地域冷房など
Capellaの買収金額
約470億円
2025年1月31日の双日の発表。4.7億豪ドル。年表29件のうち、買収金額が書かれているのはこの1件だけです
この記事はこんな方に
  • 海外での事業づくりを担当する方へ。オーストラリアの7件が、中古車から公共交通、ガリウムまで、どの順番で並んだかを双日自身の発表で追えます
  • 買収のあとの組み合わせを考える方へ。2023年の空調会社Ellis Airに、2025年のClimatech、Next Greenを重ね、「建物のエネルギーをまとめて引き受ける」形にした順番が見られます
  • 事業の入れ替えを担当する方へ。東京油槽、双日船舶、北米の貨車リースの3件を、どんな理由で次の持ち主と組む形にしたかが並んでいます
3行でいうと
  1. 双日の年表29件を中身で分けると、エネルギーと環境10件、食と暮らし7件、インフラと素材5件、自動車販売4件、次へ渡したもの3件になる。
  2. オーストラリアの案件は7件。2023年5月16日に中古車販売のAlbert Automotive、17日に空調のEllis Airを、2025年1月30日に空調のClimatech、31日にインフラ開発のCapellaを、どちらも2日続けて発表した。2025年11月に電力小売のNext Green、12月にUGLの交通部門の50%、2026年7月にガリウムの生産と続く。
  3. 空調のEllis Air・Climatechと電力小売のNext Greenは、あとの発表が前の会社の名前を挙げて組み合わせている。29件のうち買収金額が書かれているのはCapellaの約470億円(4.7億豪ドル)だけで、ほかは記載がない。

双日の年表29件を、中身で分けてみた。

エネルギーと環境10件、食と暮らし7件、インフラと素材5件、自動車販売4件、次へ渡したもの3件。

国で数えると、いちばん多いのはオーストラリアの7件だった。しかも、領域がばらばらだ。中古車、空調、インフラ開発、電力小売、公共交通、ガリウム。一つの国の中で、横に広げている。

この記事は2026年10月時点の公開情報にもとづきます。数値は双日株式会社のニュースリリースの公表値です。公表値が確認できないものは、その旨を書いています。年表は2023年2月以降の発表から拾っています。

2日続けて、2回

2023年5月16日、オーストラリア最大の独立系中古車販売会社Albert Automotive Holdingsの全株式を取得したと発表した。全24店舗を展開する会社で、発表には「同国の自動車販売事業に参入を果たし」とある。

翌日の5月17日には、空調設備の設計・施工・保守を手がけるEllis Airに加わり、豪州で省エネルギー事業に入ったと発表した。従業員は約410人。

同じことが、約1年8か月後にもう一度起きる。2025年1月30日に空調と冷凍冷蔵設備のClimatechの株式70%を取得し、31日にインフラ開発のCapella Capital Partnershipを約470億円(4.7億豪ドル)で買うと発表した。Capellaは従業員78名で、プロジェクトの受注実績は3.4兆円(340億豪ドル)。発表には「案件の組成から資産管理まで一貫して手がけるビジネスモデルへ転換」とある。

用語EPCとO&Mいーぴーしー・おーあんどえむ

EPCは設計・調達・建設、つまり「つくる」仕事です。O&Mは運転と保守、つまり「動かして守る」仕事です。UGLの交通部門の発表で、双日はEPCに加えてO&Mの機能を手に入れると書いています。

CHART

事業稼働チャート

双日が2023年以降に記録した主な動きと、その期間
Albert Automotive(豪州の中古車)2023–
Ellis Air(豪州の空調)2023–
Carbon Xtract(大気からのCO2回収)2023–
Silaba Motors(パナマの自動車販売)2024–
Freestate Electric(米国の電気設備工事)2024–
Climatech(豪州の空調)2025–
Capella(豪州のインフラ開発)2025–
インドのバイオメタン2025–
日本エイアンドエル2025–
Next Green(豪州の電力小売)2025–
UGL交通部門(豪州の公共交通)2025–
タシケント新国際空港2026–
2023202420252026
継続中役目を終えた

空調の会社に、電力小売を重ねた

2025年1月のClimatechの発表には、2023年5月にEllis Airを連結子会社にしたことが書かれ、両社の売上高を合わせると約450億円(450百万豪ドル)規模になるとある。

2025年11月26日には、電力小売と、太陽光・蓄電池の設計・施工のNext Green Groupを買った。この発表の見出しには「Ellis Air・Climatechとのシナジーで」とあり、空調の設備を入れたあと、運転と必要なエネルギーの供給まで、建物インフラ全体を引き受けると書いている。

実務のコツ

まず空調の会社で建物に入り、次に同じ領域の会社を足し、最後に電気そのものを売る会社を加える。豪州の3件は、あとの発表が前の会社の名前を挙げてつないでいる。

2025年12月2日には、UGLの交通部門の持分50%を取得し、公共交通に入った。同部門の2024年の売上高は1,000億円規模。2026年7月15日には、JOGMECとの合弁会社を通じて、米Alcoaの豪州子会社と西オーストラリア州でガリウムをつくると正式に決めた。

TIMELINE

双日の新規事業 年表

公開情報から拾った29件(2023〜2026年)
  • 2023.02BYDの正規ディーラー事業に参入電気自動車のBYDの日本法人と、乗用車の正規ディーラー契約を結んだ。双日のディーラー会社が、神奈川県と愛知県で販売を始める。継続中
  • 2023.02東京油槽の全株式を次へ渡すことで合意液体を預かるタンクターミナルの東京油槽の全株式を、セントラル・タンクターミナルへ渡すことで合意した。規模が大事な事業なので、新しいパートナーのもとで続けるのがよいと判断した。役目を終えた
  • 2023.05豪州最大の独立系中古車販売会社を買収オーストラリアで中古車の卸売と小売を手がけ、24店舗を展開するAlbert Automotive Holdingsの全株式を取得した。豪州での自動車販売に初めて入った。継続中
  • 2023.05豪州で省エネルギー事業に参入オーストラリアで空調設備の設計・施工・保守を手がけるEllis Airに加わり、建物の省エネルギー事業に入った。双日の資金を組み合わせて、建物のエネルギー消費を減らす。継続中
  • 2023.06大気からCO2を回収する新会社を設立九州大学発の技術で、大気から二酸化炭素を回収する装置をつくる新会社Carbon Xtractを設立した。2020年代後半の実用化を目指す。継続中
  • 2023.06ケニアで即席麺の製造販売に参入ケニアのKapa Oil Refineriesと組み、即席麺の製造と販売を始めた。2026年をめどに、東アフリカの即席麺の市場でシェア20%を目指す。継続中
  • 2024.02パナマで自動車販売事業に参入パナマで自動車の輸入卸とディーラーを営むSilaba Motorsの全株式を取得した。国内に8拠点を持ち、年間の販売台数はパナマで2番目。継続中
  • 2024.05ロイヤルHD・銚子丸と米国に合弁会社ロイヤルホールディングス、銚子丸と3社で、米国に飲食の合弁会社SUSHI-TEN USAを設立した。寿司を中心にした新しいお店をつくる。双日の出資は33%。継続中
  • 2024.05サウジアラビアの地域冷房へ合弁契約サウジアラビアの財閥傘下のFAS Energyと、地域冷房の合弁契約を結んだ。建設中の施設に冷たい空気を送るサービスから始める。継続中
  • 2024.07米国のテイクアウト寿司事業を買収米国中西部を中心に、スーパー300店舗以上でテイクアウトの寿司を売るSushi Avenueの事業を買った。グループの水産会社マリンフーズと一緒に米国の寿司に入る。継続中
  • 2024.08タイで農家向けプラットフォームの会社を設立タイに新会社Sojitz Kaset Dee Xを設立した。農家向けの営農支援サービスと、事業者向けの農業プラットフォームを提供する。継続中
  • 2024.10米国の大手電気設備工事会社を子会社に米国の首都圏で電気設備の工事を手がけるFreestate Electricの持ち分90%を取得し、連結子会社にした。従業員は約1,300人。省エネルギーのサービスと組み合わせる。継続中
  • 2024.12アイルランドで電力小売に参入アイルランドで電気を売るPinergyの98%を取得すると決めた。売っている電気は一般家庭約20万世帯分にあたる。継続中
  • 2025.01豪州の空調・省エネ会社Climatechを買収オーストラリアで空調と冷凍冷蔵の設備を手がけるClimatechの株式70%を取得した。2023年に加わったEllis Airと合わせた売上高は約450億円規模になる。継続中
  • 2025.01豪州最大級のインフラ開発会社を約470億円で買収オーストラリアでインフラの開発、財務アドバイザリー、資産管理を手がけるCapella Capital Partnershipを、約470億円(4.7億豪ドル)で買うと決めた。案件づくりから資産の管理までを一つの流れで手がける。継続中
  • 2025.03双日船舶の株式の一部を次へ渡す船の売買や仲介を手がける双日船舶の株式の一部を、オリックスと正栄汽船へ渡した。事業を大きくするために、ほかの会社と組む形にした。役目を終えた
  • 2025.04ロイヤルHDとベトナムで外食に参入ロイヤルホールディングスと組み、ベトナムのホーチミンにレストランの1号店を開いた。双日がベトナムで外食を手がけるのは初めて。継続中
  • 2025.04米EFMと森林ファンドの合弁会社を設立米国の森林投資会社EFMと、森林ファンドをつくる合弁会社を設立した。森を育てながらカーボンクレジットを生み出す。運用資産は2億ドル程度になる見込み。継続中
  • 2025.04インドのバイオメタン製造・販売に参入インドで、農業の残りかすからバイオメタンをつくって売る事業に加わった。2026〜2027年度に30基のプラントを動かし、年16万トンをつくる。継続中
  • 2025.05日本エイアンドエルを子会社に合成ゴムのラテックスやABS樹脂をつくる日本エイアンドエルの株式66.5%を、住友化学と三井化学から取得すると決めた。EVや蓄電池の市場で事業を広げる。継続中
  • 2025.05シンガポールの医療サービス会社を子会社にシンガポールで、約20の専門科がそろう医療センターを運営するRoyal Healthcareを子会社にした。継続中
  • 2025.09北米の貨車リース事業の持分50%を次へ渡す北米で貨車を貸し出すSouthwest Rail Industriesの持分50%を、芙蓉リースの100%子会社へ渡した。5千両を超える貨車を扱う事業に、芙蓉リースの資金調達力を加える。役目を終えた
  • 2025.11豪州の電力小売会社を買収オーストラリアで電気を売り、太陽光や蓄電池も設置するNext Green Groupを買った。空調のEllis Air、Climatechと組み合わせ、建物のエネルギーをまとめて引き受ける。継続中
  • 2025.12豪州で公共交通に参入(UGL交通部門の50%)オーストラリアのUGLの交通部門の持分50%を取得し、鉄道などの公共交通に入った。売上高は1,000億円規模。つくるだけでなく、動かして保守する仕事も手に入れる。継続中
  • 2026.03ブラジルでJaguar Land Roverの販売に参入ブラジルでJaguar Land Roverの正規ディーラーを営むPremier Veiculosの全株式を取得した。5店舗で、ブラジル全体の同ブランドの販売台数の約1割を占める。継続中
  • 2026.04米国のバイオメタン製造・販売に参入米国テネシー州で、埋立地から出るガスでバイオメタンをつくるFidem Energyに出資し、持分法適用会社にした。継続中
  • 2026.07豪州でガリウムの生産を正式決定JOGMECとの合弁会社を通じ、米Alcoaの豪州子会社と、西オーストラリア州でガリウムをつくると正式に決めた。できたガリウムは日本を中心に売る予定。継続中
  • 2026.07ウズベキスタンの新国際空港の開発・運営に参画ウズベキスタンの首都タシケントにつくる新しい国際空港の開発と運営に加わった。2030年の開港予定で、総事業費は3,700億円(25億米ドル)を超える。継続中
  • 2026.10英国の水産物加工・販売会社を買収英国の量販店に魚を加工して売るNew England Seafood Internationalとその親会社の全株式を取得した。欧州で魚を仕入れ、加工し、売る足場を手に入れる。継続中

エネルギーと環境は10件、自動車販売は4か国

エネルギーと環境の10件は、国も形もさまざまだ。米国の電気設備工事会社Freestate Electric(持ち分90%)、アイルランドの電力小売Pinergy(98%)、インドのバイオメタン(30基・年16万トン、総事業費4億米ドル超)、米国のバイオメタンのFidem Energy、米国の森林ファンドの合弁会社、サウジアラビアの地域冷房、そして九州大学発の技術で大気からCO2を回収する新会社Carbon Xtract。

自動車販売は、2023年2月の日本のBYDのディーラー、5月のオーストラリアの中古車、2024年2月のパナマのSilaba Motors(年間販売台数でパナマ第2位)、2026年3月のブラジルのJaguar Land Roverのディーラーの4件。4件とも国がちがう。

同じ「自動車販売」でも、国ごとに、その国で強い売り方を持つ会社を一つずつ迎えている

次へ渡したものは3件

2023年2月、タンクターミナルの東京油槽の全株式をセントラル・タンクターミナルへ渡すことで合意した。発表には「スケールが重要であることから新たなパートナーとともに事業を行うことが最適と判断」とある。2025年3月には双日船舶の株式の一部をオリックスと正栄汽船へ、9月には北米の貨車リース会社の持分50%を芙蓉リースの子会社へ渡した。

3件とも、渡した金額の記載はない。発表の言葉は、どれも「規模」や「資金調達力」など、相手と組むことで事業を大きくする、という内容だった。

新規事業マニアの解説

ここまでを、ひとつにまとめると

双日の29件のうち7件はオーストラリアです。2023年5月と2025年1月に、2日続けて新しい会社を迎えています。

空調のEllis Air・Climatechに電力小売のNext Greenを重ね、2025年12月には公共交通、2026年7月にはガリウムまで広げました。

挑戦する人の視点で見ると

双日の29件から持ち帰れるのは、「一つの国で、一つの会社を足場に、隣の領域へ広げる」という見方だと思う。

2023年5月に空調の会社で建物の仕事に入り、2025年に同じ領域の会社と電気を売る会社を足した。同じ月にインフラ開発の会社を迎え、その年の終わりには公共交通に入っている。

いま自分が担当なら、海外の案件の稟議に「この国で、次に隣り合う領域はどこか」を一行書き添えると思う。1件の買収を、その国での次の一手の入り口として説明できるからだ。

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この記録がどう受け取られたのかを、みんなで確かめる場所です。

NEWFOR MEMO
新規事業マニアのメモ ─ 自分が担当だったら

自分が担当だったら、この年表から持ち帰るのは「一つの国の中で、足場の会社の隣へ広げる」という一点だと思う。

オーストラリアの7件:Albert Automotive(2023年5月16日、全株式、24店舗)→Ellis Air(2023年5月17日、従業員約410人)→Climatech(2025年1月30日、70%)→Capella Capital Partnership(2025年1月31日、約470億円=4.7億豪ドル、2025年6月までに完了予定)→Next Green Group(2025年11月26日、連結約60名)→UGL交通部門(2025年12月2日、50%、売上高1,000億円規模)→ガリウム生産の正式決定(2026年7月15日、JOGMECとの合弁会社を通じて)。

自動車販売の4件:BYDの正規ディーラー(2023年2月3日、神奈川県・愛知県)→Albert Automotive(2023年5月16日)→Silaba Motors(2024年2月21日、パナマ、8拠点)→Premier Veiculos(2026年3月3日、ブラジル、5店舗)。

最後に注意点。29件のうち、買収・取得の金額が書かれているのはCapellaの約470億円だけで、ほかはどれも記載がない。インドのバイオメタン(4億米ドル超)とタシケントの新国際空港(3,700億円=25億米ドル超)は総事業費で、双日が払う額ではない。ベトナムの外食の合弁会社は、発表時点ではロイヤルホールディングスの100%出資で、双日は「今後出資予定」と書かれている。2025年10月のベトナムの牛肉の発表は、ページが開けず年表に入れていない。

Soichiro新規事業マニア
40代 / 事業開発
新規事業マニア。20代でスタートアップを立ち上げ、1社を上場企業へ売却。その後、外資系コンサルティングファーム、通信大手、大手人材グループ、国内大手ITサービスの中で、社員として新規事業の立ち上げに携わる。並行して顧問として10社近くの新規事業を担当。事業立ち上げ歴20年。名前は、本田宗一郎への敬意から。
20年 事業立ち上げ歴1社 上場企業へ売却4社 事業会社の中で立ち上げ10社 顧問として担当