東芝の年表22件を、年の順に並べてみた。
2016年から2020年の5年間に、5件を次へ渡している。医療機器、白物家電、半導体メモリ、そして2回に分けたパソコン事業である。
2022年からは、電力や防災の新興企業へ出資が続く。そして2024年からは、主要事業を担う子会社を、1社ずつ東芝本体へ集めはじめた。
2016年からの5年で、5件を次へ渡した
2016年3月17日、東芝メディカルシステムズ。画像診断機器の子会社の全株式を、キヤノンへ約6,655億円で譲渡すると発表した。
2016年3月30日、白物家電。東芝ライフスタイルの株式80.1%を、中国の美的集団へ約537億円(約473百万米ドル)で譲渡すると発表した。東芝は19.9%を持ち続け、東芝ブランドはグローバルで40年間使えることとした。
2017年9月20日、半導体メモリ。東芝メモリの全株式を、ベインキャピタルが主導する日米韓の連合へ合計2兆円で譲渡すると決めた。東芝はそのうえで3,505億円を再出資する予定とした。
2018年6月と2020年8月、パソコン。dynabookの事業を担う東芝クライアントソリューションの株式80.1%をシャープへ譲渡すると2018年6月に決め、同年10月に完了した。残る19.9%も2020年8月にシャープへ渡した。金額は、東芝自身の発表には記載がない。
会社や事業を、ほかの会社に引き渡すことです。NEWFORでは「次へ渡した」と書きます。
事業を渡すときの単位は、会社ごと・株式の一部・2回に分けて、とさまざまだ。東芝は白物家電で19.9%を残し、パソコンでは19.9%を2年後に渡した。いっぺんに渡すか、関わりを残すかも、選べる手のひとつである。
事業稼働チャート
その前には、海外の会社を2件買っていた
渡した5件の前に、東芝は海外の会社を大きく2件買っている。
2006年2月、米ウェスチングハウス。原子力の大手を54億ドル(約6,210億円、1ドル115円で換算)で買い、株式の51%以上を持つとした。2011年7月、スイスのランディス・ギア。スマートメーターの大手を、産業革新機構と組んで総額16億2,000万米ドルで買った。東芝の出資は10億2,000万米ドル・出資比率60%である。
年表では、この2件もその後、次へ渡している。2006年からの年表22件のうち、次へ渡したものは合わせて7件になる。
医療機器 約6,655億円、白物家電80.1% 約537億円、半導体メモリ 合計2兆円。2016年からの5年で、東芝は5件を次へ渡した
未確認事業年表
- 2006.02米ウェスチングハウスを買収米原子力大手ウェスチングハウスを54億ドル(約6210億円)で買収し、議決権の51%以上を保有した。同社は2018年に投資ファンドへ譲渡した。役目を終えた
- 2011.07スイスのランディス・ギアを買収産業革新機構と共同で、スイスの電力量計大手ランディス・ギアを総額16億2000万ドル(東芝10億2000万ドル、革新機構6億8000万ドル)で買収したが、2017年に保有株式を譲渡した。役目を終えた
- 2012.04米IBMのPOS事業を買収東芝テックが米IBMのリテール・ストア・ソリューション事業を約8.5億ドル(約680億円)で取得。新設持株会社の80.1%を東芝テック、19.9%をIBMが持つ形とした。継続中
- 2016.03医療機器子会社をキヤノンへ譲渡東芝メディカルシステムズの全株式を約6655億円でキヤノンへ譲渡することに合意し、2016年に画像診断機器事業を次へ渡した。役目を終えた
- 2016.03白物家電事業を美的へ譲渡東芝ライフスタイルの株式80.1%を約537億円で中国・美的集団へ2016年に譲渡し、東芝は19.9%を保有継続した。東芝ブランドは40年間使えることとした。役目を終えた
- 2017.09半導体メモリ事業を2兆円で譲渡東芝メモリの全株式を総額2兆円でベインキャピタル主導の日米韓連合へ譲渡すると決議し、東芝は3505億円を再出資して持分法適用会社とした。2018年に譲渡を完了した。役目を終えた
- 2018.06パソコン事業をシャープへ譲渡東芝クライアントソリューションの株式80.1%をシャープへ譲渡し、dynabook事業の主導権を移した。残る19.9%も2020年に譲渡した。役目を終えた
- 2020.08ダイナブック株式を完全譲渡保有していたDynabook社の残り19.9%をシャープへ渡し、2018年に渡した80.1%とあわせて同社を完全に次へ渡した。パソコン事業はここで役目を終えた。役目を終えた
- 2022.05英Reactive社に出資し系統計測東芝エネルギーシステムズが、電力系統の慣性を測る技術をもつ英Reactive Technologies社へ出資し、電力系統の管理技術を強めた。継続中
- 2023.03英Picloに出資し需給調整市場へ東芝エネルギーシステムズが、分散型エネルギー資源の柔軟性を取引する市場を運営する英Picloへ出資し、需給調整サービス事業を広げた。継続中
- 2023.05SmartpulseへCVC出資東芝エネルギーシステムズが、再生可能エネルギーの短期電力取引を担うトルコ・英国発のSmartpulseへ、CVCの枠組みを使って出資した。継続中
- 2023.09国内連合のTOB成立で非公開化日本産業パートナーズ主導の国内連合が1株4620円で公開買付けを実施し、応募比率78.65%で成立。東芝は上場を終え、非公開の会社として再び歩き出した。継続中
- 2024.02リコーと複合機で合弁ETRIA設立東芝テックとリコーが複合機の開発・生産を1つにする合弁会社ETRIA(資本金5億円)を横浜市に設立し、2024年7月1日から事業を始めた。継続中
- 2024.07仏量子ファンドQuantonation II出資フランスの量子技術に特化したベンチャーキャピタルファンド「Quantonation II」(目標運用総額2億ユーロ)へ出資し、量子分野の新興企業を後押しした。継続中
- 2024.11インフラ子会社を本体へ統合年間売上高3832億円の東芝インフラシステムズを吸収合併すると発表し、2025年4月付で東芝本体へ統合した。継続中
- 2025.04エネルギー子会社を本体へ統合資本金226億円・年間売上高3790億円の東芝エネルギーシステムズを吸収合併すると発表し、2026年4月付で東芝本体へ統合した。継続中
- 2025.09購買データ子会社を統合東芝デジタルソリューションズが東芝データを吸収合併し、260万人を超える購買データの基盤を引き継いで、2025年10月からデータ事業を強めた。継続中
- 2025.09デジタル子会社を本体へ統合9月2日発表。資本金235億円・2024年度の単独売上高1,685億円の東芝デジタルソリューションズを吸収合併すると発表し、2026年4月1日付で東芝本体へ統合した。主要事業を担う子会社4社を本体へ統合する方針にもとづく3社目となった。継続中
- 2026.03ローム・三菱電機とパワー半導体統合協議東芝デバイス&ストレージがローム、三菱電機と、各社のパワー半導体事業を1つにする協議を始める基本合意書を結び、世界で戦える規模づくりを目指した。継続中
- 2026.03防災テックのSpecteeへ出資し戦略提携3月12日発表。東芝デジタルソリューションズが、SNSや気象データ・衛星画像から災害の状況をつかむSpecteeへ出資し、サプライチェーンの備えと気象データサービスで組む戦略提携契約を結んだ。出資額・出資比率の記載はない。継続中
- 2026.07Prodroneと国産迎撃ドローンで技術連携7月31日発表。東芝がレーダ・防空・指揮統制で培った技術とシステムインテグレーションを、Prodroneが機体設計や自律飛行制御を持ち寄る。国産部品ベースのサプライチェーン構築をめざす継続中
- 2026.08名古屋市営地下鉄でクレカ乗車を開始8月17日発表。東芝インフラシステムズがタッチ決済対応の改札機システムを開発・提供し、9月3日始発から全駅で開始。Visaなど7つの決済ブランドに対応する。継続中
2022年からは、電力と防災の新興企業へ出資
2022年からの出資は5件ある。2022年5月に電力系統の慣性を測る英Reactive Technologies、2023年3月に分散型エネルギーの取引市場を運営する英Piclo、2023年5月に再生可能エネルギーの短期取引を担うSmartpulse。3件とも東芝エネルギーシステムズからの出資である。
2024年7月にはフランスの量子技術のファンド「Quantonation II」(目標運用総額2億ユーロ)へ出資し、2026年3月には東芝デジタルソリューションズが、SNSや気象データから災害の状況をつかむSpecteeへ出資して戦略提携を結んだ。出資額は、5件とも発表に記載がない。
組む相手も増えた。2024年2月には東芝テックがリコーと複合機の合弁会社ETRIAを設立し、2026年3月にはローム・三菱電機とパワー半導体の統合に向けた協議を始める基本合意書を結んだ。2026年7月には、Prodroneと国産の迎撃ドローンで技術連携を始めている。
2024年からは、主要子会社3社を本体へ集めた
2023年9月、国内連合による公開買付けが成立し、東芝は上場を終えた。その翌年から、子会社を本体へ集める発表が続く。
2024年11月14日、東芝インフラシステムズ(資本金100億円・2023年度の年間売上高3,832億円)を吸収合併すると発表し、2025年4月1日付で統合した。2025年4月15日には東芝エネルギーシステムズ(資本金226億円・2023年度の単独売上高3,790億円)、2025年9月2日には東芝デジタルソリューションズ(資本金235億円・2024年度の単独売上高1,685億円)について同じ発表をし、どちらも2026年4月1日付で統合した。
東芝は、これを「主要事業を担う子会社4社を廃止し適切な時期に当社に統合する方針」にもとづくものとしている。4社のうち残る1社は、パワー半導体の協議を進めている東芝デバイス&ストレージである。
ここまでを、ひとつにまとめると
2016年から2020年は、医療機器・白物家電・半導体メモリ・パソコンの5件を次へ渡した時期でした。
2022年からは電力と防災の新興企業へ5件を出資し、2024年からは主要事業を担う子会社3社を本体へ集めています。
挑戦する人の視点で見ると
東芝の22件から持ち帰れるのは、「外へ渡す」と「内へ集める」は、どちらも会社の形をつくる手だということだと思う。
2016年からの5年は、事業を会社ごと外へ渡した。2024年からは、子会社という形そのものをやめて、本体へ集めている。向きは逆だが、どちらも「いまの東芝に合う形」を探した記録である。
そのあいだに、小さな出資が5件入っている。電力の需給、気象と防災、量子。金額の記載はなく、どれも相手の技術を借りて、自社の事業に組み合わせる形だ。
いま自分が担当なら、自社の年表を「渡した」「集めた」「組んだ」の3列に分けて並べてみると思う。東芝の年表は、その3列が20年でどう入れ替わったかを見せてくれる。