オリックスの年表26件を、中身で分けてみた。
次へ渡した5件、再生可能エネルギーと蓄電6件、事業承継と事業の引き受け6件、空港とIR3件、そのほかの買収と立ち上げ6件。
目を引いたのは、渡した5件の並び方だった。5件のうち4件は、前後半年のうちに、新しく買う・投じる記録が並んでいる。
2026年8月3日、渡した日と買った日が同じだった
2026年8月3日、オリックス銀行の譲渡が完了した。1993年8月設立のオリックス銀行の全株式を、大和ネクスト銀行へ3,700億円で渡した。4月27日の適時開示で、金利が上がる局面への対応や、証券と銀行の機能を組み合わせた大和証券グループとの相性を理由に挙げている。
同じ8月3日、英国のAerFinを買収すると発表した。AerFinは、退役した航空機のエンジンや部品を買い取り、売り、貸し、直す会社だ。オリックスは発表で「新造機のリースから退役後の部品活用まで、航空機バリューチェーン全体に事業基盤を広げ」ると書いている。金額の記載はない。
銀行を次へ渡した日に、航空機の部品という、まだ持っていなかった場所に入った。1日の発表の中に、渡すことと始めることが両方ある。
育てた事業や持分を売って得た資金を、次の成長分野へ投じ直す考え方です。オリックスは2025年のGreenkoの発表で、この言葉を使っています。
事業稼働チャート
Greenkoは、渡した代金の行き先まで同じ文書に書いてある
2021年3月、インドのGreenko Energyの株式約21.8%を取得した。総額は約961百万米国ドル。稼働済みの設備容量は合計6.9GWだった。
2025年7月、持分20%のうち17.5%を渡した。相手はAM Green、譲渡額は1,282百万米国ドル(約934億円)。同じ発表で、AM Greenの約731百万米国ドルの転換社債を引き受けるとしている。理由は「キャピタルリサイクリングの一環」で、次世代エネルギーの分野へ投じるためと書いてある。
入ったときの約961百万米ドルは約21.8%ぶん、渡したときの1,282百万米ドルは17.5%ぶんで、比べる持分は同じではない。それでも、渡した代金がどこへ向かうのかを、オリックス自身が同じ文書で示している。
事業を渡す発表と、次に投じる先の発表を、同じ日・同じ文書で出す。渡すことが次の挑戦の元手になる、という順番を外に見せるやり方だ。
弥生を渡す前に、融資の仕組みは手元へ移していた
2014年11月、会計ソフトの弥生を買った。MBKパートナーズが組成した投資目的会社から株式99.9%を取得し、登録ユーザーは全国で125万以上だった。
2017年4月、弥生が2月に設立したALT株式会社で、オンライン融資を立ち上げた。日々の仕訳データなどの会計ビッグデータを使って与信する仕組みだ。2021年4月8日には、「アルトア オンライン融資サービス」をオリックス本体へ移すと発表している。
2022年3月、弥生をKKRが運営する投資ファンドへ渡した。譲渡金額の記載はない。会計ソフトの会社は次の持ち主へ、そこで生まれた融資の仕組みはオリックスへ。渡す単位と、手元に残す単位を分けている。
渡した5件のうち4件は、前後半年のうちに新しく買う・投じる記録と並んでいる。オリックスの年表では、渡すことと始めることが1本の線になっている
オリックスの新規事業 年表
- 2014.11業務ソフトの弥生を買収MBKパートナーズが組成した投資目的会社から、会計ソフトの弥生の株式99.9%を取得すると発表した。弥生の登録ユーザーは全国で125万以上。2022年にKKRへバトンを渡した。役目を終えた
- 2015.12関西エアポートを設立仏ヴァンシ・エアポートと各40%を持つ関西エアポートを設立し、関西・伊丹の両空港を2016年4月1日から2060年3月までの44年間運営する契約を結んだ。継続中
- 2017.04会計データで貸すオンライン融資を始動グループの弥生が2017年2月に設立したALT株式会社で、日々の仕訳データなどの会計ビッグデータを使って与信するオンライン融資を、2017年10月めどに試験的に始めるとした。継続中
- 2017.05米地熱のOrmatへ約22.1%出資米国の上場地熱発電事業会社Ormat Technologiesの株式約22.1%を、約627百万米国ドル(約707億円)で取得した。Ormatは727MWの設備容量を持つ。継続中
- 2017.09神戸空港の運営会社を設立関西エアポートの100%子会社として関西エアポート神戸を設立し、2018年4月1日から42年間、神戸空港を運営するとした。継続中
- 2019.04事業承継支援で2社の株式を取得後継者の課題を抱える中小企業向けに2018年に立ち上げた投資専門チームで、ゴルフ場の散水設備工事と地盤調査の2社の株式を取得した。継続中
- 2019.11米Hunt Real Estate Capitalを買収米国の不動産ローン組成・サービシング会社で、ローン組成額で業界第9位のHunt Real Estate Capitalの全株式を取得することで合意した。継続中
- 2021.03印Greenkoの株式約21.8%を取得インドの再生可能エネルギー事業者Greenko Energyの株式約21.8%を、総額約961百万米国ドルで取得した。稼働済みの設備容量は合計6.9GW。2025年に持分の大半を次へ渡した。役目を終えた
- 2021.07スペインのElawan Energyを買収14カ国で再生可能エネルギーの発電所を開発・運営するElawan Energyの発行済株式の80%を取得した。稼働中は約726MW、建設中は598MW。継続中
- 2021.11M&A仲介事業を本格展開M&A支援機関として登録し、後継者の課題を抱える中小企業向けに、M&Aの仲介サービスを本格的に始めた。継続中
- 2022.03弥生をKKRへ譲渡2014年に取得した弥生を、KKRが運営する投資ファンドへ譲渡した。譲渡金額は発表に記載がない。役目を終えた
- 2022.07関西電力と蓄電所事業に参入関西電力と50%ずつ出資し、和歌山県紀の川市で出力48MW・容量113MWhの蓄電所を2024年4月に動かす計画を立てた。継続中
- 2022.12Elawan Energyを完全子会社化へ2021年に80%を取得したElawan Energyを、2023年3月末までに完全子会社にすると発表した。継続中
- 2023.01DHCを子会社化化粧品・健康食品のDHCの議決権91.1%を約3,000億円で取得した。DHCの売上高は90,531百万円(2022年7月期)。継続中
- 2023.04大阪IRの区域整備計画が認定日本MGMリゾーツと共同で投資する大阪IR株式会社の、夢洲での統合型リゾートの区域整備計画が国土交通大臣に認定された。継続中
- 2024.03オリックス・クレジットの66%をドコモへ個人向けローンのオリックス・クレジットの株式5,182,714株をNTTドコモへ譲渡した。譲渡後はドコモ66%、オリックス34%。役目を終えた
- 2024.07パナソニック コネクトの事業に80%出資パナソニック コネクトのプロジェクター事業等を引き継ぐ会社に、オリックス80%・パナソニック コネクト20%で出資する資本提携を結んだ。2025年4月1日の予定。継続中
- 2025.07債権回収の会社をリサ・パートナーズへオリックス債権回収など、債権投資・回収事業を行う会社の株式の全てをリサ・パートナーズへ譲渡した。譲渡金額は記載がない。役目を終えた
- 2025.07Greenko株式を渡しAM Greenへ投資2021年に出資したGreenkoの持分20%のうち17.5%を1,282百万米国ドル(約934億円)で譲渡し、次世代エネルギーのAM Greenへ約731百万米国ドルを投じた。本人は「キャピタルリサイクリング」と書いている。継続中
- 2025.09米Hilco Tradingを子会社化資産評価や資産担保型融資(ABL)を手がける米Hilco TradingのLLC持分の71.4%を取得し、子会社にした。継続中
- 2025.11カタール投資庁と25億ドルの投資基盤カタール投資庁と、総額25億米国ドルの国内プライベートエクイティ投資の基盤を立ち上げた。出資はオリックス60%・QIA40%で、事業承継やカーブアウトが主な対象。継続中
- 2026.03野添産業の全株式を取得東大阪市で包装資材の卸売とリサイクルを手がける野添産業(1965年設立)の全株式を取得し、再生プラスチック事業の基盤づくりを進めるとした。継続中
- 2026.08オリックス銀行を大和ネクスト銀行へ1993年8月設立のオリックス銀行の全株式を、大和ネクスト銀行へ譲渡価額3,700億円で譲渡し、8月3日に完了した。役目を終えた
- 2026.08英AerFinを買収し航空機部品へ退役した航空機のエンジンや部品を売買・リース・修理する英AerFin(2010年設立)の全株式を取得すると発表した。新造機のリースから退役後の部品活用まで広げる。金額の記載はない。継続中
- 2026.09建設機械の泰平商事を取得クレーンの販売とレンタルを手がける泰平商事(1968年設立)の全株式を取得する契約を結んだ。10月中に取得完了の予定で、金額の記載はない。継続中
- 2026.09外部投資家と系統用蓄電所を事業化大分県由布市(70MW・280MWh)と山形県米沢市(75MW・309MWh)の蓄電所を、外部投資家3社と共同で開発する。出資はオリックス23.7%。外部の資金で蓄電所を開発するのは初めて。継続中
引き受ける側の仕組みを、7年かけて整えた
事業承継と事業の引き受けの6件は、2019年4月から始まる。2018年に中小企業の事業承継のための投資専門チームをつくり、2019年にゴルフ場の散水設備工事と地盤調査の2つの会社の株式を取得した。
2021年11月にはM&A支援機関として登録し、仲介サービスを本格的に始めた。2024年7月には、パナソニック コネクトのプロジェクター事業等を引き継ぐ会社に80%を出資した。2025年11月には、カタール投資庁と総額25億米国ドルの投資の基盤を立ち上げた。出資はオリックス60%・QIA40%で、対象は事業承継、上場企業の非公開化、大企業の事業部門の切り出しだ。
2026年には、3月に東大阪市の包装資材の会社・野添産業、9月にクレーンの販売とレンタルの泰平商事の全株式を取得した。
ここまでを、ひとつにまとめると
オリックスの26件のうち5件は、育てた事業を次へ渡した記録です。弥生、オリックス・クレジット、債権回収の会社、Greenkoの持分、そして3,700億円のオリックス銀行。
5件のうち4件は、前後半年のうちに新しく買う・投じる記録と並びます。2026年8月3日には、銀行を渡した日に英国の航空機部品会社の買収を発表しました。
挑戦する人の視点で見ると
オリックスの26件から持ち帰れるのは、渡すことを、次の挑戦の元手として扱うという見方だと思う。
弥生は7年あまり、Greenkoは4年あまり。持っていた長さはばらばらだが、5件のうち4件は、渡す発表の前後半年のうちに次の買収や投資の発表がある。Greenkoでは、渡した代金の行き先を同じ文書に書いている。
いま自分が担当なら、事業を手放す稟議を書くときに、「その資金でどこへ入るのか」を同じ紙に書いてみると思う。渡すことを1件の挑戦の区切りではなく、次の挑戦の始まりとして説明できるからだ。