1. 心強かった
最初の資金を出してくれた人が、取締役に入ってくれた。心強かった。
事業のことも詳しかったし、人も紹介してくれた。月に一度の役員会は、正直、勉強になった。
——三年目に、事業の向きが変わった。
2. 反対されるのではなく、進まない
新しい方向に舵を切りたいと言ったとき、その人は反対しなかった。「もう少し数字を見てからにしよう」と言っただけだった。
翌月も、その次の月も、同じことを言われた。反対ではない。ただ、決まらない。
反対されるより、決まらないほうが時間を使う。そのことを、僕はこのとき初めて知った。
3. 二つの帽子
弁護士に相談して、はじめて整理がついた。
その人は、二つの立場を持っている。ひとつは株主。会社の一部を持っている人。もうひとつは取締役。会社の経営を決める人。
株主としての立場は、株を買い戻さないかぎり動かせない。でも取締役としての立場は、株主総会で決められる。この二つが別物だと、僕は分かっていなかった。
4. 話し合いの場をつくる
結論から言うと、その人には取締役を降りてもらった。株主としては残ってもらった。
進め方は、まず二人で話した。次に、他の株主にも同席してもらって話した。感情の話にならないように、事業の計画と、そこで必要な意思決定の速さを紙にして持っていった。
その人は最後に「わかった」と言った。いまも株主として名前が載っているし、年に一度は近況を報告している。
5. あとで分かったこと
最初にその人を取締役に入れたのは、僕が頼んだからだ。契約に「◯年で見直す」とは書いていなかった。
入ってもらうときの話はするのに、抜けてもらうときの話はしない。共同創業者のときと、まったく同じことをしていた。
人を責める話ではないと思う。仕組みが無かっただけだ。
先に決めておくこと(3つだけ)
1. 「株主」と「取締役」を分けて考える。お金を出してもらうことと、経営を決める場に入ってもらうことは、別の判断です。
2. 取締役として入ってもらうなら、任期を書く。「◯年で見直す」の一行。更新すればいいだけです。
3. 決まらないことも、反対と同じだけ数える。役員会で三か月止まっているものがあるなら、それはもう決まっていない、ということです。